写真●イー・モバイル代表取締役社長兼COOのエリック・ガン氏
写真●イー・モバイル代表取締役社長兼COOのエリック・ガン氏
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 東京ビッグサイトで開催している「ワイヤレスジャパン2008」で2008年7月23日,イー・モバイル代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)であるエリック・ガン氏は,「イー・モバイルの事業戦略」と題して基調講演した。

 イー・モバイルのこれまでの取り組みを総括するとともに,自社の通信サービスや関連製品を競合サービス・製品と比較した際の強み,今後の成長性などについて説明した。加えて,日本の通信料金が国際的に見て割高であり,同社は率先して日本の通信料金の引き下げのためにさまざまな施策に取り組んでいると訴えた。

2012年に携帯契約数は1億3500万

 「さまざまな業界初の事例を作ってきた」。ガン氏が「業界初」を強調するのは,市場規模の大きさと今後の成長性が高い通信市場で,データ通信を主とした業界初の事業を実現させたことや,国際的に見て割高である通信料金の引き下げに寄与してきたことへのに対する自負があるためだ。

 国内で1億契約を突破した携帯電話。ここには巨大な市場が形成され,「1人1台」ということで日本の人口を見ればすでに成熟市場のように映る。しかし,ガン氏は国際的に見ると,普及率が100%を超える国が29カ国あり,「1人2台以上の時代に入っている」と指摘する。

 同氏によると,国内の携帯とPHSの加入者数は「2012年までに国内人口に対して107%の契約数になる。1億3500万の携帯人口になるという計算で,今後4年で2800万の需要がある。音声だけで1人1台まで普及したが,データカードとiPhoneのようなスマートフォンによるデータ通信の需要は増えていく。これは固定の光ファイバーとADSLを組み合わせた市場よりもはるかに大きい」と同社が狙う市場の大きさを解説した。

 こうした市場環境で,最大7.2Mbpsの高速通信ができるHSDPA方式のデータ通信サービスを事業展開するためのインフラ構築費用などとして「通信ベンチャーとしては業界初の規模となる計3932億円の資金調達を実現した」(ガン氏)。

 一方,同社の最大の強みとして打ち出しているのが低く設定した料金体系だ。中でもガン氏が強調していたのが,音声通話の料金。「日本の通信料金は世界的に見て割高。特に携帯電話の通話料は世界で一番高い」とした上で,「ここ最近,基本料金は安くなってきたが,問題の通話料金が高止まりしたまま」と指摘した。

 最近では同じキャリアに加入している端末同士の通話ならば基本料金だけで済むようなプランも一般的になってきた。しかし,「大手通信キャリア3社の料金は携帯も固定も他社キャリアへの通話で1分40円程度かかるが,イー・モバイルでは携帯も固定も10~18円で提供している」(ガン氏)と,他社キャリアの携帯および固定電話に通話する際の料金が高いことを問題視し,自社サービスの競争優位性を訴えた。

 こうした取り組みなどで自社サービス・製品の魅力を打ち出し,ここ最近では「3カ月ごとに2倍のペースで契約者が増えている。2008年6月に契約者数は60万人を突破した」と,低料金での通信サービスに対する需要の高さと,自社サービスの好調を指摘した。

 ただ,国内の通信エリアにおけるカバー率は2008年6月で85%。東北,中国,四国,沖縄の4地域に関しては50%を下回っている現実もある。低料金および高速データ通信ができるサービスであっても,それを活用できるエリアが狭く,使いたいときに利用できない状況では,新規契約者のさらなる開拓に限界があるし,利用者の満足度も下がる。これについてガン氏は「今秋にはカバー率が低い地域でも50%を突破し,早期に音声利用でも満足できるカバー率を目指す」とした。