写真●NTTドコモの尾上誠蔵執行役員研究開発推進部長
写真●NTTドコモの尾上誠蔵執行役員研究開発推進部長
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 2008年7月22日,NTTドコモの尾上誠蔵執行役員研究開発推進部長(写真1)が「ドコモの4Gに向けた3G発展構想と取り組み」と題した講演を行った。これは,ワイヤレスジャパン2008に合わせて開催中の「ワイヤレスコンファレンス2008」のいちセッション。尾上部長は「この1年でLTE(Super 3G)の支持者が増えたが,同じW-CDMAの仲間の中でLTEとHSPA Evolution(HSPA+)という技術のフラグメンテーション(分裂)が発生しつつある。このような状況は市場の発展に悪影響を及ぼす」と指摘した。

 国内外で3.9G(3.9世代携帯電話)システムへの取り組みが本格化する中,本命視されるLTEに加えて,HSPAを高度化したHSPA Evolutionへも注目が集まっている(関連記事)。LTEが既存のW-CDMAシステムから無線伝送方式を変えるなど大きな改善を加えるのに対して,HSPA Evolutionは既存システムからの変更点が少なく,比較的早い段階でもサービス投入できる点が特徴だ。

 しかしHSPA Evolutionについて尾上部長は,「無線技術の進化について,数多くの小さなステップを踏むことは,端末やネットワークのシステムを複雑にして結局コスト増につながる。市場にとって悪影響を及ぼす」と指摘。ドコモとしては,HSPA Evolutionを経由するような細かなステップは踏まず,LTEを優先的に採用するとした。また,ほかの通信事業者に同社の考えを個別に説明しているという。

LTEの屋外実験ではハンドオーバー試験も実施

 このほか尾上部長は,同社が2008年2月から実施しているLTEの屋外実証実験(関連記事)について,端末が基地局間を移動するハンドオーバーの試験を開始したことを明らかにした。

 LTEは,W-CDMAのネットワークのように端末が2つの基地局に対して同時にアクセスして途切れのない通信を実現するソフト・ハンドオーバーは採用していない。一つの基地局を離れてから,次の基地局に接続するハード・ハンドオーバーの仕組みを採用している。「3GPPでも多くの議論があったが無線部分の効率を上げるために,ハード・ハンドオーバーを採用することで落ち着いた」(尾上部長)。無線部分でデータの欠落があった場合,コア・ネットワークを通して基地局間でデータを転送することで,途切れのない通信を実現する仕組みである。

 実際,同社が実施した実験では,30Mビット/秒程度の映像伝送をしながら基地局間を移動しても,映像に乱れが発生しない様子などを披露。同社が2009年末に定めているLTEの商用システムの開発完了に向けて,順調に進んでいることをアピールしていた。