電光掲示板型インターネット端末「ANOBAR」
電光掲示板型インターネット端末「ANOBAR」
[画像のクリックで拡大表示]
横スクロール・ブラウザでテレビ番組の実況を視聴する
横スクロール・ブラウザでテレビ番組の実況を視聴する
[画像のクリックで拡大表示]
テレビ放送の予定や番組ごとの実況頻度を確認する
テレビ放送の予定や番組ごとの実況頻度を確認する
[画像のクリックで拡大表示]

 ファブレス・ベンチャーのアノドスは2008年7月16日,FED(Field Emission Display,電界放出ディスプレイ)パネルを採用した電光掲示板型インターネット端末「ANOBAR」(型番AB00100)を開発したと発表した。薄型テレビの手前などに設置し,離れた距離から文字情報を視聴する用途に適する。開発の狙いは,「インターネット端末の将来像を世の中に提示すること」(代表取締役社長の森栄樹氏)。製品化は未定だが,2008年10月から同社Webサイトを経由してコンテンツ開発者向けにモニター配布を開始する予定である。

 ANOBARは,電光掲示板のような横長のディスプレイを搭載して文字情報の視認性を最重視したインターネット情報端末(写真1)。薄型テレビの手前に配置してテレビ放送と同時に閲覧する使い方などを想定する。本体は,スティック状のきょう体にx86アーキテクチャの小型PCデバイスを載せ,Windows XP Embededとアプリケーションを組み込んでいる。有線ネットワーク・ポート(RJ45)またはUSB接続のFOMAモデム(FOMA A2502 HIGH-SPEED)を経由して,インターネット上の各種Webサイトから情報を取得する。本体はファンレス構造となっており,電源はACアダプタで供給する。

 機能面での特徴は,インターネット情報の表示/閲覧方法として,電光掲示板のように文字情報を横スクロール表示する専用ブラウザ「POTAMION」を開発して搭載した点である。RSS配信や各種ニュース,コミュニケーション・サービス「Twitter」など,Webアクセスを経由して入手可能な文字情報をダウンロードした上でフィルタリングし,見やすくスクロール表示する。スクロール速度は,情報量が多い時には高速に,情報量が少ない時には低速にするといった調整が可能。描画品質は60フレーム毎秒。一方,機構面での特徴としては,スクロール文字をくっきり見せるために適したディスプレイとして,CRTと同様の原理を用いた薄型ディスプレイであるFEDを採用した。

文字横スクロールの独立型インターネット端末,テレビとネットを融合

 ANOBARを開発した背景には,「パソコンや携帯電話はユーザーとの距離が近すぎて,コンテンツの利用スタイルを限定している」(森氏)という状況がある。その上で,「テレビのようにコンテンツと適度な距離感と関係性を保つことができる新しい端末として,ANOBARを開発した」という。森氏は,以前からインターネット・コンテンツの視聴方法としてのテレビを高く評価していた。この一方で,データ連動などのような現状のテレビが備えるアプローチとは異なる,テレビと独立して動作する端末を理想としてイメージし,今回のANOBARを生み出した。

 互いに独立したテレビ放送とANOBARを組み合わせる例が,テレビ放送はテレビ放送として視聴しつつ,その放送に連動した実況解説コンテンツを横スクロール・ブラウザのPOTAMIONで視聴する,という使い方である。具体的には,テレビ放送の視聴者がインターネット掲示板(2ちゃんねるの実況板など)に書き込んだ感想をWeb経由で取得し,フィルタリングした上で横スクロールで流す(写真2)。テレビ放送チャンネルごとの実況の更新頻度をグラフ表示する機能なども備える(写真3)。ANOBARへのリモコン指示とテレビのチャンネル選択を連動させる使い方も可能だ。

 ANOBARは視聴専用端末であるため,インターネット掲示版への文字入力はできない。だが,この一方で,ANOBARのユーザー情報管理サイトを経由した,ANOBAR会員間向けのメッセージ伝達機能を備えている。リモコン操作によって,あらかじめ指定された文字列「www」を他会員のスクロール・ブラウザ画面に通達する,という機能である。これにより,今,誰がどのテレビ放送を見ているかが見えるとともに,今どのテレビ番組に注目すべきかの気づきとなる。

 このほか,任意のFlashコンテンツの再生が可能である。アラーム付きデジタル時計としての利用もできる。横スクロールを応用した環境ソフトの例としては,脳トレーニング・コンテンツを搭載した。例えば「46+49+5=100(正解:脳年齢20歳)」など,四則演算式を単独で,または異なる演算式を上下に同時に並べてスクロールさせて見せてくれる環境ソフトである。演算式は,あらかじめ決まった文字列データをただ流しているのではなく,その都度独自のアルゴリズムによって難易度の評価を含めて自動生成している。

民生機器では珍しいFEDパネルを採用,残像感を消す

 ANOBARの主なハードウエア仕様は,以下の通りである。ディスプレイとして,双葉電子工業製の11.5インチ型FEDパネル「FE3004」を搭載している。画面解像度は640×96ドットで,スクリーン・サイズは288.0×43.2ミリ・メートル。FEDの原理はブラウン管(CRT)などと同様であり,電子を蛍光体へ衝突させて発光させるというもの。RGBカラー染色体を用いたカラー表示が可能である。現在主流の液晶と比べて動画再生などに強く,ANOBARのような文字列のスクロール用途にも適する。

 FEDディスプレイ以外のコンピュータ部は,CPUが台湾VIA TechnologiesのVIA C7-M(1GHz),チップセットがVIA VX700。メインメモリーは1Gバイト,ストレージはフラッシュ・メモリーで容量は2Gバイト。LANポートはRJ45形状で100BASE-TX/10BASE-T×1。USBポートを1基備え,NTTドコモのFOMA A2502 HIGH-SPEEDを接続した携帯電話インターネット接続も可能である。

 ANOBAR本体の外形寸法は幅354×高さ85.5×奥行97ミリ・メートルで,重さは約2キロ・グラム。本体両サイドにステレオ・スピーカを内蔵し,本体前面には,近くに人がいるかどうかが分かる人感センサーを搭載。消費電力は12V5A。リモコン「AR00100」は,外形寸法が横44×縦84.3×厚さ7ミリ・メートルで,重量は約20グラム(電池含む)。ACアダプタ「E/621DN12」は,入力がAC100V1.5Aで,出力が12V5A。外形寸法は幅116×高さ50×奥行31ミリ・メートルで,重量は約470グラム。

 なお,ANOBARは,アノドスが手がける第1号デバイスである。同社の存在意義を森氏は,「初めに理想のサービス・イメージを念頭に置く。そして,そのために必要なハードウエアからソフトウエア,コンテンツまでを試作し,具現化する。こうして,来たるべき将来像を世の中に提示する」と説明する。アノドス自身では,製品化や事業化に対しては具体的なプランを持たない。「アノドスが製作した機器のコンセプトとアイディアを,どんどん盗んでほしい」と,森氏は希望する。