図1 配信の仕組み
図1 配信の仕組み
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 KDDI研究所(本社:埼玉県ふじみ野市,所長:秋葉重幸氏)は2008年7月14日,IPネットワーク経由で特定の地域向けにワンセグ(携帯端末向け地上デジタル放送)のコンテンツを配信できる「ワンセグエリア放送送信システム」を開発したと発表した(発表資料)。

 KDDI研究所は今回,ワンセグエリア放送を実現するための技術として,ワンセグのコンテンツをIPネットワーク経由で配信し,遠隔地において地上デジタル放送の放送規格に準拠したワンセグ信号にリアルタイムで変換する「ワンセグIP/RF変換技術」を新たに開発した(図1)。IPネットワークによる配信を考慮した暗号化機能および誤り訂正機能により,1チャンネルあたり500kb/s以下の小さな伝送帯域で高い秘匿性と伝送品質を実現した。またワンセグ送信機に,IPネットワークで発生する「パケット到着間隔揺らぎ」を吸収する機能や周波数同期回路を実装し,高品質のワンセグ信号を送信できるようにした。

 KDDI研究所は,「今回のシステムを使用することで,IPネットワークに接続可能な任意の場所でワンセグ放送エリアを展開でき,配信サーバの設置場所も柔軟に決めることができる。またコンテンツをリアルタイムでワンセグ信号に変換できるため,配信サーバーで番組の一元管理や差し替えが容易に行えるほか,IPマルチキャスト技術を用いることで複数のエリアへ同時配信できるようになる」としている。さらに「ローカルでのファイル再生を中心とした従来のワンセグエリア放送方式に対し,生中継番組の配信や全国規模で展開する店舗などへの同報配信など,ネットワークを介することで新しい形態でのワンセグエリア放送サービスの展開を期待できる。さらに技術的には地下街などの電波不感地帯への地上波ワンセグ放送の再送信にも適用することが可能」とコメントしている。なお今回のワンセグコンテンツ配信システムは,「ワイヤレスジャパン2008」(7月22日~24日開催)のKDDIブースで展示される。