写真:映像配信事業の具体的な内容を語るアドビのイルグ社長
写真:映像配信事業の具体的な内容を語るアドビのイルグ社長
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 米Adobe Systemsの日本法人であるアドビシステムズ(本社:東京都品川区,社長:ギャレット イルグ氏)は2008年7月10日に,6月16日に米国で発表されたAdobeの2008年度上期の決算と今後の事業方針に関する報道機関向け説明会を開催した。説明会の質疑応答でギャレット・イルグ社長(写真)は,現在米国で提供している「Adobe Media Player」を使った映像配信サービスを日本でも提供する準備を進めていることを明らかにした。また,テレビや携帯電話機,パソコンなど複数の機器で同じコンテンツを視聴できるようにするための技術開発を行う「Open Screen Project」について,開発成果を次のバージョンのFlash製品群に盛り込む計画であるという。一方,7月11日に発売される米Appleの「iPhone」向けビジネスに関しては,「日本では特に何も考えていない」と答えた。

 Adobe Media Playerは現在英語版が提供されており,米国で映像配信サービスが行われている。英語版のソフトを利用して日本から米国の配信サービスを利用することはできるが,ドラマやテレビ番組の多くは海外からの視聴が制限されており,日本から視聴できるコンテンツが限られている。日本向けの映像配信の準備状況について,現在はAdobe Media Playerの動作に必要となるランタイムソフト「AIR」の日本語化が完了した段階であり,Player本体の日本語版は11月に予定されている映像関連の展示会「Inter Bee」に合わせてリリース予定だという。既に,コンテンツプロバイダーや放送事業者とコンテンツ提供の交渉を開始しており,「Adobe Media Player日本語版のリリースに合わせて,国内向けの映像配信サービスを開始する」(イルグ社長)とした。

 また,米Intelや英Sony Ericson,韓国Samsung Electronics,NTTドコモ,東芝,英BBCなどと協力して作業を進めている「Open Screen Project」については,開発成果をFlash製品群の次期バージョンとなる「Flash 10」と「Flash Lite 4」に盛り込むという。イルグ社長は,「機器に合わせてコンテンツを最適化する作業をなくし,よりオープンな環境を構築する。その結果,Flashコンテンツをあらゆるところに普及させたい」と狙いを説明した。

 一方,iPhone向けのビジネスに関してイルグ社長は,「iPhoneで利用するWebベースのサービスでわが社の技術が使われることはあるだろうが,国内のiPhone市場に向けて特に我々が積極的に取り組む予定はない」と語った。また,同社のFlash技術のiPhoneへの対応については,「具体的な製品開発については米国本社の担当になる。何らかの議論はあると思うが,日本法人としてはコメントできない」と述べるにとどめた。