写真1●間伐材を使ったノート型パソコン「ウッドシェル」
写真1●間伐材を使ったノート型パソコン「ウッドシェル」
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写真2●絹織物を使った、三つ折りノート型パソコンのモックアップ
写真2●絹織物を使った、三つ折りノート型パソコンのモックアップ
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 富士通は、2008年7月7日に開幕した北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)に、きょう体の一部に木材や布を使用したパソコンを参考出展した。天然資源を利用することで環境負荷を抑えることができる、との考えで開発したプロトタイプだ。開発したのは、富士通グループの製品デザインを担当する子会社、富士通デザインである。

 木材を使用したノート型パソコン「ウッドシェル」を、国内ベンダーがグリーンIT製品やサービスを紹介する「グリーンITパビリオン」に展示した(写真1)。バッグと一体型になっており、ディスプレイを閉じると鞄と同じ形状になる。実際にパソコンとして動作する。

 パソコンのきょう体部分に木材を使った。使用した木材は杉の間伐材である。間伐材とは、木が多い森林の中で良い木を育てるために伐採された木の木材のことだ。強度を高めるために間伐材を重ねてプレスし、ウッドシェルの形状に加工した。

 木材を削って加工する方法もあったが、「時間がたつにつれてたわむ恐れがあった。また、強度の面でも不安があった」(開発を担当した富士通デザイン 第一デザイン事業部プロダクトデザイン部の宮村秀幸氏)。高知県で森林を有効利用した事業を展開する企業、エコアス馬路村と共同で試作を重ねて完成させた。

 キーボードについては、石油を原料としたプラスチックではなく、植物を原料としたプラスチックを使用。そのほかの部品、ディスプレイやマザーボードなどは、既存のパソコンと同じ部品を使っている。

 製品化に向けては、現行製品並みの強度が必要になるほか、生産体制やコストなど、課題は多い。具体的な製品化の予定はないものの、「このように木材を使ったパソコンなら、ほかの木材製品のように使うほど愛着がわくユーザーもいるはず。パソコンを大切に使うことにつながるのでは」と、宮村氏は話す。

三つ折りのノート型パソコン

 富士通はもう1台、きょう体に絹織物をあしらったパソコンを、環境技術を集めたモデルハウス「ゼロエミッションハウス」に展示した(写真2)。ただし、こちらはモックアップで、パソコンとしては動作しない。

 特徴は、その斬新なデザインにある。折りたたむ際は、現在のノート型パソコンのように二つ折りではなく、三つ折りにする。ディスプレイ部分だけを広げるとノート型パソコンとして利用できる。

 さらにキーボード部分を手前に広げると、1枚の平らなディスプレイになる。タッチパネル機能を持たせておき、打ち合わせなどでは画面をさわりながら話し合う、といった使い方を想定したものだ。

 天板部分に絹織物を使っているほか、キーボード部分には刺しゅうで文字を縫い込んだ。開発を担当した富士通デザイン 第二デザイン事業部コーポレート・ソリューションデザイン部の田中宏治デザインディレクターは、「富士通グループはさまざまな技術を持っている。現状ではコンセプトが先行しているこのような製品も、いずれ現実のものになる可能性はある」と、将来に期待する。