消防庁は2008年7月3日、福井県美浜町全域で6月30日に「ミサイル発射」の緊急警報が誤って流れた原因を正式発表した。既報の通り、2つの人的ミスが重なったというのが真相である。

 1つめのミスは、テストで使った「ミサイル発射」の警報データを削除しなかったこと。警報データは消防庁の「全国瞬時警報システム(J-ALERT)」から受信した。J-ALERTは、津波や地震、ミサイル発射といった緊急情報を全国の市町村に伝えるシステムだ。

 美浜町に設置したJ-ALERTの受信装置のうち、警報の受信を伝える回転灯が故障していた。美浜町は、消防庁の指示を受けながらこの修理を進めていた。修理の際は、受信装置の動作確認のために警報データを流す。

 受信装置は、警報データを受信した1分後に削除する仕様になっていた。ところが試験時は必要最小限のプログラムしか起動しておらず、消去プログラムが停止していた。この状態で受信装置を再起動したところ、警報データが防災無線に伝わって流れ出た。消防庁とJ-ALERT開発ベンダーの理経が手順書を作成したが、そこには警報データを削除する手順が記載されていなかった。

 2つめのミスは、動作確認に使った警報データの選択ミスである。J-ALERTには訓練専用の警報を流す仕組みがある。ところが今回の作業では「ミサイル発射」の警報を使ってしまった。

 消防庁は再発防止策として、受信装置などの確認試験の際には、警報などの情報が装置内に残っていないことを確認してから作業を終了させるといった手順を追加する。

 J-ALERTは消防庁が気象庁や内閣官房などから収集した災害・有事情報を人工衛星を介して全国の自治体に配信するシステムだ。自治体の防災無線と連動することによって、人手を介さずに緊急警報を届ける。今年4月時点で約100の自治体が利用している。