ワークスアプリケーションズの牧野正幸代表取締役最高経営責任者
ワークスアプリケーションズの牧野正幸代表取締役最高経営責任者
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 ワークスアプリケーションズの牧野正幸CEO(最高経営責任者)は7月3日、都内ホテルで開催中の「IT Japan 2008」で「国際基準に対応するIT投資とは?」と題する講演を実施した。牧野CEOは、現在の日本のIT投資の実態を「失敗」と言い切り、これが日本の国際競争力が上がらない原因と指摘する。

 「1989年から96年のバブル期、日本の国際競争力は5年連続トップだったが、バブル崩壊後には20位前後に甘んじている」。牧野CEOは、スイスの国際経営開発研究所(IMD)の調査データを挙げながら、現在の日本の国際競争力の現状について説明する。一方、IMDの調査で最も国際競争力が高い国は、米国である。日米で国際競争力の差がこれほどまでに開いてしまった理由は、「バブル崩壊から10年間続けてきた日本のIT投資の失敗にある」と牧野CEOは話す。

 IT投資の総額で見れば、日米にあまり差はない。だが、投資する領域に違いがある。牧野CEOによれば「日本はバックオフィス系システムへの投資コストが米国の3倍ぐらい高い」と言う。「バックオフィス系」とは、人事、会計、物流、購買といったシステムのこと。「バックオフィス系は、システム化が経営戦略の方向付けに関与する領域ではない。それなのに、日本のユーザー企業は、自社の業務に合わせて独自のシステムを作り込み、運用に膨大なコストをかけている」。

 国際競争力が第1位の米国は、利益を生み出す「コアコンピタンス系システム」がIT投資の大半を占める。バックオフィス系システムについては、コストをかけずに導入・運用することを重視する。このため、「バックオフィス系システム向けのパッケージ製品を、カスタマイズすることなく導入することが常識になっている」と牧野CEOは言う。カスタマイズをすれば導入コストがかかる。バージョンアップ作業にも手間が掛かり、運用管理コストを押し上げる。

 牧野CEOは、「日本の企業が国際競争力を身に付けるには、ノーカスタマイズで使えるパッケージ製品を導入すべきだ」と結論付ける。ただし、ノーカスタマイズで使えるパッケージ製品であれば何でもいいわけではない。「運用コストを3分の2にできるかどうかが判断基準。減らせないのなら、投資すべきではない」とバックオフィス系システムのIT投資の目安を明らかにした。さらに、「日本のベンダーが開発したパッケージ製品こそが、日本企業の国際競争力を高められる」と自社製品のアピールも怠らなかった。

■変更履歴
牧野氏の肩書きを社長としていましたが、CEOに修正しました。お詫びして訂正します。 [2008/07/07 15:00]
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