2008年6月30日に福井県美浜町全域に「ミサイル着弾」との誤った緊急警報が流れた原因は、警報受信装置を修理する際の作業漏れと警報データの選択ミスが重なった結果にあることがわかった。

 美浜町は、津波や地震、ミサイル発射といった緊急情報を全国の市町村に伝える消防庁の「全国瞬時警報システム(J-ALERT)」を導入している。この日は美浜町の職員がJ-ALERTの受信装置の修理に取り掛かっていた。受信装置はスピーカーと回転灯、モニターなどで構成する。このうち回転灯が点灯しない事象が春ごろに発生。J-ALERTを管理する消防庁の指示に従って受信装置のチェックや再起動などをしていた。

 修理の際は、受信装置が正常に動くか確めるために警報データをJ-ALERTから受信装置に送る。この警報データを修理後に消去する手順が漏れた。消防庁とJ-ALERTの開発ベンダーである理経が考えた手順に誤りがあったとみられる。結果的に、受信装置に残った警報が修理後に流れた。

 試験に使う警報データは、受信から一定時間が経過すると自動的に消える仕組みだ。このため、消防庁は消去の手順は不要と判断したようだ。これまでも修理後に警報データは削除していなかったが、同様の問題は起こっていない。

 ただ、美浜町のケースでは、修理しても回転灯が直らなかったために消防庁が受信装置を再起動するよう指示していた。この手順が過去の事例とは異なるという。消防庁は、再起動の操作と警報データの削除の関連性について調査を続けている。

 実は、もう1つミスが重なった。J-ALERTは「訓練です」といったメッセージで始まる訓練報を流せる仕組みになっている。動作確認に訓練報を選んでいれば、誤って警報が流れても、さほど影響はなかったはずだ。ところが今回の作業では、なぜか訓練報でなく本物の警報を使った。

 日経コンピュータの問い合わせに、福井県美浜町は「消防庁からの報告待ちだ」(住民安全課)とコメントする。消防庁は「開発ベンダーと共に原因を究明中」(国民保護運用室)と話す。

 J-ALERTは消防庁が気象庁や内閣官房などから収集した災害・有事情報を人工衛星を介して全国の自治体に配信するシステム。自治体の防災無線と連動することによって、人手を介さずに緊急警報を届けることができるのが特徴だ。2007年2月に情報送信を始め、今年4月時点で約100の自治体が利用している。