日本IBMの大歳卓麻社長兼会長
日本IBMの大歳卓麻社長兼会長
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 「日本の経営者の96%が、変化を必要と感じている」。日本IBMの大歳卓麻社長兼会長は2008年7月1日、東京都内で開催中の「IT Japan 2008」の講演でこのように語った。この結果は、米IBMが2年に1回、世界の経営者に対してインタビューしてまとめる「グローバルCEOスタディー」の2008年版から引いたものだ(2008年の対象経営者は世界で1130人、日本で121人)。グローバルなビジネス環境の変化に合わせて、あらゆる企業が変革を迫られている実情を浮き彫りにした。

 もっとも大多数の企業は変化を危機ではなく、チャンスととらえているという。世界のフラット化により、世界の人口65億人がネットワークにつながり経済活動に参加するようになった。これまでは30億人だった顧客の対象が2倍になったのだ。それに対応するには変化が必要だが、チャンスも大きいという。

 変化は、顧客の側にも起こっている。顧客の情報武装が進み、どんどん賢く、要求も具体的になる。そうしたなか、その顧客の想像を超えるようなソリューションを出せる企業こそが大成功を収めるというのが、グローバルCEOスタディーの結論だった。そのいい例が「任天堂のWii。自らイノベートするだけでなく、顧客からのアイデアを常に吸収している点がすばらしい」と大歳社長兼会長は語った。

 さらに企業は自らのビジネスの常識を破壊する必要があるとした。「これまでの日本企業は、高度成長期の成功体験を拡大再生産しているだけだった。その形態はもう無理」と大歳社長兼会長は重ねた。このほか環境問題・CSRに真剣に取り組むこと、グローバルな人材を活用することを成長する企業の条件として挙げた。

 IBM自身も、そうした変化に対応できる「グローバルに統合された企業 (グローバリー・インテグレーテッド・エンタープライズ:GIE)」を目指して変革を進めているという。グローバル人材の活用では、インドでのIBM社員は約8万人、ブラジルでは約2万人に達していることを指摘。「売り上げ規模でいえば米国がトップで日本が2位だが、日本人の社員数は2万5000人と割合は低くなっている」と続けた。

 「例えばインドでは、従来は賃金の安さで雇用していたが今は違う。大学の立派なカリキュラムで勉学に励み、入社してからは滅茶苦茶に働く。そんな人からだからこそ雇っている。日本人も、そういう人たちと同じ土俵で戦っていかなければならなくなる。だからこそ変革が必要なのだ」と講演をまとめた。