米Microsoftは2008年6月26日(米国時間),予定よりも1カ月以上早く「Windows Server 2008」向け仮想化機能「Hyper-V」の正式版をリリースした(関連記事:Microsoft,「Windows Server 2008」向け仮想化機能「Hyper-V」を正式リリース)。ただし,Windows Server 2008と別に単独提供されるスタンドアロン仮想化サーバー「Microsoft Hyper-V Server」は登場しなかったが,Windows Server 2008バンドル用の各種Hyper-Vは公開された。現在Windows Server 2008には,プレリリース版Hyper-Vが付属している。

 Microsoft上級製品マネージャのJeff Woolsey氏は先ごろ開催された会合で,「6月第4週にWindows Server 2008用Hyper-Vを正式版へ移行させる」と筆者に述べた。「Windows Server 2008発売から180日以内にHyper-Vをリリースするという約束を守り,約1カ月半早く出せる。様々な関係者から寄せられた膨大なフィードバックを見て,(正式版への移行に十分な)品質基準を満足できたと確信した。すでに多くの顧客が実際の環境でHyper-Vを動かしており,当社の主なWebシステムでも使っている」(Woolsey氏)

 Woolsey氏は「Hyper-Vが完成したことで,性能面を話題にできるようになった」とした。米Intelや米QLogicといった企業の独自調査結果から,結果は予想をはるかに上回り,「ベータ版に比べ,特にネットワークとストレージの処理性能が大幅に向上している」(Woolsey氏)。同氏の引用した調査データを見ると,iSCSI/ファイバ・チャネル対応ストレージの入出力(I/O)処理を性能いっぱいまで行う状態において,Hyper-Vは物理サーバーの88~100%の速度で動くという。

 さらに,ネットワーク通信とストレージI/Oの処理性能は,サーバーを2プロセサや4プロセサ構成にアップグレードすれば比例して向上する。Microsoftは,Hyper-V上で「Exchange Server 2007」を動かす社内テストを実施し,システムを仮想化する際に既存インストール手順の変更や成功事例からの逸脱がないことを確認した。つまり,新たに面倒な作業を行わなくても,今までと同じやり方でExchange Serverベースのメッセージング・サーバーを仮想化できるのだ。

 ベータ版Hyper-Vからの改良点は,性能向上以外にもたくさんある。Hyper-Vの仮想化環境で動かせるゲストOSは,50種類近くになった。例えば,Service Pack 2(SP2)/SP3適用済み「Windows XP」(64ビット版を含む),SP1適用済み「Windows Vista」(32ビット版および64ビット版),「Windows Server 2003」「同2008」,SP4適用済み「Windows 2000 Server」,SP1/SP2適用済み「SUSE Linux Enterprise Server 10」などについて,全エディションがゲストOSとして使える。

 それだけでない。Microsoftは,同社の社内インフラと外部向けWebシステムの主要部分をプレリリース版Hyper-V環境に移行済みで,今後も順次移行させていく。現時点で,それぞれ1日平均200万ページ・ビュー以上アクセスされるMSDNとTechNetのWebサイトを,完全に仮想化したHyper-V環境で運営している。

 Hyper-Vの詳細なレビュー記事は,SuperSite for Windowsに掲載する予定だ。Windows Server 2008のユーザーは,MicrosoftのWebサイトから正式版Hyper-Vをダウンロードできる。Windows Update経由の配布は7月8日に始まる。