電子機器や半導体などの市場調査会社である米iSuppliは米国時間2008年6月24日,米Appleの新しい携帯電話端末「iPhone 3G」に関する製品原価の分析予測を発表した。発売前の同製品を“仮想分解”して,部品,サプライヤ,コストを推測したところ,原価見積もりは173ドルだった。大幅な機能向上にもかかわらず,部品の価格低下により,従来機と比べ製造原価が下がっているという。
初代iPhoneの8Gバイト版は,部品の価格が下がってからの原価が226ドルだった。したがって新製品では,初代iPhoneの原価を約23%下回る見通しである。
iPhoneのBOM(Bill Of Material:部品表)に基づいた原価内訳によると,NANDフラッシュ・メモリ(8Gバイト)が22.80ドル,機能向上したタッチスクリーンとディスプレイが各20.00ドル,HSDPAデジタル・ベースバンドが15.00ドルになる見通し。なお,同社の原価見積もりには,ソフトウエア開発費,流通やパッケージング関連のコストは含まれていない。
Appleはこれまで,通信事業者が顧客から得る収入の一部を徴収する収益モデル「レベニュー・シェア」を採用していた。しかしiPhone 3Gでは,通信事業者がiPhoneを1台販売するごとにAppleに「補助金」を支払うモデルを導入する。通信事業者から継続的な収入を得られなくなるため,ハードウエア原価を抑えることが,以前にも増して重要になってくるという。
iSuppliはこの補助金がiPhone 1台当たり約300ドルになると見込んでいる。このため,iPhone 3G(8Gバイト版)は従来機より値下げして199ドルで販売されるが,原価見積もりの173ドルに補助金と物流管理費などを合わせると,Appleは実質的にiPhone 3Gを初代iPhoneとほぼ同額の約499ドルで販売することになる。
iPhoneや「iPod」における粗利益率は約50%だが,iPhone 3Gでは部品の価格低下が貢献して,それをさらに上回る粗利益率を獲得できる見通しである。
iPhone 3Gは2008年7月11日に,米国や日本など世界22カ国で発売される。この後,iSuppliは実機を使った分析調査を行う予定である。
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