ソフトバンクは2008年6月25日、定時株主総会を開催して事業戦略を説明した。席上、孫正義社長は7月11日に発売予定の米アップルの携帯電話機「iPhone」に言及し、「インターネットに接続するデバイスの主役はパソコンから携帯電話にシフトする。iPhoneはその方向への強力な牽引役になる」と語った。

 「モバイルインターネットを制するものがインターネットを制する」「アジアを制するものが世界を制する」――。孫社長が今後10年のグループ戦略として掲げたテーマだ。前者は携帯電話からのインターネットアクセスを事業の柱に据え、インフラ、プラットフォーム、コンテンツの各領域で事業展開するという考え方。後者はアジア市場の規模が米国市場を超え、グーグルなど米国を軸足に置く企業から、アジアでシェアを持つ企業に主導権が移るというものだ。

 「ユーザーがパソコンを使うのは1日2時間程度。一方、携帯電話は24時間手元にある。また、2007年の世界でのパソコン出荷台数は2億7000万台であるのに対し、携帯電話は11億台。台数も接触時間も携帯電話の方が長い」。孫社長は携帯電話をインターネットの本命とみる理由を説明する。さらに携帯電話のプロセサの高速化、通信速度の高速化、ディスプレイの高精細化が、携帯電話をインターネット利用に適した端末に変えてきたとする。

 こうした携帯電話の“インターネットマシン”化を進める牽引役に、孫社長はiPhoneを位置付ける。「iPhoneでWebアクセスしてみると、指だけで拡大・縮小できるなどその快適さに驚くと思う。私も使ってみて驚いた。iPhoneを持ったユーザーはパソコンを使ってWeb閲覧する頻度は急激に減ると考えている」と自らの体験を基にiPhoneへの期待を語った。

 モバイルインターネットでは、これまではNTTドコモのiモードのように通信事業者がサービスを主導してきた。こうした状況に対し、孫社長は「これからはインターネットでサービスを提供してきたマイクロソフトやアップル、グーグルやヤフーといった企業がモバイルインターネットを主導する。その方がより快適なサービスの実現や、先端技術の導入に向くはずだ」と持論を述べた。傘下にネット企業やコンテンツ事業者を持つソフトバンクグループは有利になるという主張である。