「OracleやCollaborative Software Initiativeなど,いくつものJRuby採用事例がすでに出てきている」---JRubyの作者のひとりである米Sun MicrosystemsのCharles Nutter氏は2008年6月21日,日本Ruby会議2008でこう報告した。
JRubyはJava仮想マシン上でRubyプログラムを稼動させることができる実行環境。Nutter氏はSunで業務としてJRubyを開発している。
Nutter氏らは1年前に開催された日本Ruby会議2007でJRuby 1.0を正式に公開した(関連記事)。約1年たった現在,JRubyは改良が進み,バージョン番号は1.1.2。実システムにも採用されるようになった。
米OracleのDigg風ソーシャル・カスタマー・サイト「Mix」では,JRuby上でRuby on Railsが稼動しているという。
米Collaborative Software Initiative (CSI)はJRuby上で疾病監視システムを開発し,オープンソース・ソフトウエアとして公開している(CSIの発表文)。
Sunはファイル配布ポータル・サイト「Mesiacast」でJRubyを利用している。
またThoughtWorksは共同プロジェクト管理サイト「Mingle」にJRubyを使用している。
これらのほとんどはJRuby上でRuby on Railsを稼動させている。「彼らはすでにJavaを使っていて,基盤やノウハウ,ライブラリなどを持っている。オフィス・ドキュメントやPDFを扱うライブラリなどだ。Rubyなら,これらのライブラリをJavaからよりも簡単に使える」(Nutter氏)。
「そしてパフォーマンス。それが彼らがJRubyを選んだ理由だ」とNutter氏は言う。まつもとゆきひろ氏によれば,「Nutter氏は『もしJRubyがRuby 1.8より遅ければそれは公式にバグとして登録する』と言うほどスピードにこだわっている」という。
またNutter氏は,JRubyからJavaのGUIライブラリSwingを操作するデモなどを披露した。また「Ruby on Railsでもデプロイ(アプリケーションの配備)は煩雑だ」(Nutter氏)として,Railsアプリケーションをwarファイルに変換し,コマンドで簡単にGlassfishにデプロイして実行してみせた。