経済産業省は6月20日、リコーやトヨタ自動車、大成建設などの会員企業27社と、大学教授など専門家で構成する「IT経営協議会」の第1回会合を開いた。IT(情報技術)によって日本企業の競争力を高めるための10原則を、企業経営者が参考にできる形で簡潔に示した「IT経営憲章」(下部参照)を採択。ITによる経営改善活動の道筋や、協議会会員企業の具体的事例を解説した「IT経営ロードマップ」などと合わせて、近く経済産業省のウェブサイトなどで公開する予定だ。
IT経営憲章は前文と10原則(A4用紙2枚)から成る。IT経営協議会による「宣言」として、経営者がIT活用や業務改善に対して主体的に取り組むべきテーマを強調。経営者はCIO(最高情報責任者)を任命して、ともに企業改革に取り組むべきことを明記しているのも特徴だ。リスク管理や環境に対する企業責任についても触れている。内容は2007年10月から協議会会員企業のCIOらで構成する「CIO戦略フォーラム」(委員長:リコー遠藤紘一・副社長執行役員)の月1~2回の会合で検討を重ねてきた。
IT経営憲章採択に先立って、東京海上日動火災保険、リコー、カルビーなど9社の経営者が自社のIT経営への取り組みを紹介した。リコーの近藤史朗・代表取締役社長執行役員は「当社では2001年から、私や関連する全役員、IT担当者が参加する『全社構造改革委員会』を原則として月1回、これまでに63回開いて『経営とITの融合』を図ってきた。私にとって会社の隅々の様々なことを理解できる絶好の機会になっている」と述べた。
電子政府の取り組みに「ユーザー」からの注文も
IT経営協議会はもともと、企業のIT活用について議論する場だったが、企業ユーザーがふだん利用している電子政府システムに対する不満の声も上がった。
企業トップたちが政府自体のIT活用の取り組みに注文を付ける一幕もあった。カルビーの中田康雄・代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は「情報システムはシステムを作る側の立場で作ってしまいがち。ユーザーの声を組み込むべきだ。我々もe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使っているが非常に不便で、ユーザーの立場に立っていない」と厳しく指摘。
りそなホールディングスの細谷英二・取締役兼代表執行役会長も、「JR(旧国鉄・東日本旅客鉄道)と金融機関という規制産業で(官公庁と接しながら)仕事してきたが、中央・地方政府ともにIT化が遅れていると感じる。公務員のITリテラシーも低い。(経済産業相には)ぜひ実力大臣として政府を挙げての取り組みを推進していただきたい」と続けた。
甘利明・経産相は、「私自身、今日の議論で大いに触発された。甘利事務所のホームページは政治家のホームページとしては充実しているほうだと考えていたが、果たして支援者や国民といったユーザーの視点に立っているかと思い直した」と応じた。
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