東京大学大学院情報理工学系研究科教授 米澤明憲氏
東京大学大学院情報理工学系研究科教授 米澤明憲氏
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並列オブジェクトの応用例(1)
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並列オブジェクトの応用例(2)
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並列オブジェクトの応用例(3)
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 東京大学は2008年6月19日,同大学大学院情報理工学系研究科教授で情報基盤センター長 米澤明憲氏が,ダール・ニゴール賞を受賞したと発表した。同賞はオブジェクト指向の研究で優れた業績に対して与えられる賞。米澤氏は日本人として初めての受賞者となる。

 ダール・ニゴール賞はプログラミング言語Simulaの開発者であるOle-Johan Dahl教授とKristen Nygaard教授の名にちなみ,国際オブジェクト指向技術協会(AITO)が2004年に創設した賞。これまでにデザイン・パターンの提唱者Erich Gamma氏らが受賞している。米澤氏は4人目の受賞者であり,日本だけでなくアジアで初めての受賞者である。

 授賞の対象となったのは,米澤氏の「並列オブジェクト」に関する研究。ひとつひとつが独立した処理・計算能力を持つ「並列オブジェクト」がメッセージをやりとしながら協調して計算するモデルを提唱し,プログラミング言語やコンパイラを開発した業績や,ネットワーク上を移動するオブジェクトを記述できるモバイル・オブジェクト言語「JavaGo」を開発した業績など。

 JavaGoで開発された技術は,3次元CGによる仮想世界サービスSecond Lifeの新実行基盤として採用されたという。Second Life上の物体や生物はLinden Scriptでオブジェクトとして記述されている。Second Lifeの開発者が,.NET Frameworkのオープンソース実装であるMono上で大量のオブジェクトを並列に動作させるため,また別のサーバーにオブジェクトを転送して動作させるためにJavaGoで開発された技術を採用したことを明らかにしている(Second LifeのJim Purbrick氏のブログ)。具体的には,オブジェクトをプリエンティブに動作させるためと,転送の際に仮想マシンのスタック上にあるオブジェクトの情報を取得するためのに,JavaGoと同様な実装方法で中間言語(CLI)の変換を行っているという。

 またそのほかに,天体の挙動を超並列マシンで並列オブジェクトとして計算したほか,米MIT(マサチューセッツ工科大学)やイリノイ大学でセンサーネットワークに応用した研究が行われているという。

 米澤氏は「今回の受賞は私の研究を発展させてくれた研究室出身者や学生諸君に負うところが大きい。彼らに感謝したい」と述べた。

◎関連リンク
米澤明憲氏のホームページ(東京大学)
The AITO Dahl-Nygaard Prize Winners for 2008(Association Internationale pour les Technologies Objets)
Microthreading Mono(Official Second Life Blog)