写真1●多感覚インタラクションシステムの利用イメージ
写真1●多感覚インタラクションシステムの利用イメージ
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 独立行政法人の情報通信研究機構(NICT)は2008年6月18日,立体映像の触感を確認できる技術を使って,複雑な形状をした日本の文化財を再現することに成功したと発表した。これにより,体験学習など教育機関での活用や,遠隔地からの商品確認をビジネスに活用したい企業などの需要を見込んでいる。

 NICTでは研究開発している「超臨場感コミュニケーション技術」の一環として,視覚,聴覚,触覚などの多感覚情報を統合して再現する「多感覚インタラクションシステム」を開発している。同システムは映像を表示する専用ゴーグルとディスプレイを含む映像提示台,感触を伝える専用ペンと音声を伝えるヘッドフォンからなる。このシステムを使うと,利用者は専用ゴーグルを通して見た立体映像に専用のペンで“触れる”ことで,触感や触れた時の音を確認できるようになる。

 今回再現したのは高松塚古墳出土品の「海獣葡萄鏡」。「非常に緻密(ちみつ)で複雑な形状をしており,通常であれば触れることのできない貴重な文化財。今回の成功により,インタラクティブ体感型の新しい展示システムの実用化にメドがついた」(広報室)としている。

 今後想定されるこの技術の具体的な用途としては,「提示デバイスが普及すれば,博物館や学校でのリアルな体験学習が可能になる。また,国内のブロードバンド普及率は高いため,ネットを活用して遠隔地からさまざまな商品を体感するという使い方も考えられる。通信販売などで需要があるのではないか」(同)との考えを示した。

 多感覚インタラクションシステムは高度画像処理技術として,内閣総理大臣および科学技術政策担当大臣が指揮する総合科学技術会議が発表した「革新的技術戦略(案)」に含まれる技術。主に文化資産などの体験学習への活用が期待されている。