写真●リクルート インターネットマーケティング局局長の小林 大三氏
写真●リクルート インターネットマーケティング局局長の小林 大三氏
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 「NET Marketing Forum Spring 2008」専門トラックBでは、リクルートのインターネットマーケティング局局長の小林 大三氏が、「コンバージョンUPのためのログの有効活用事例--集客、UI改善に効くログ活用方法とは?」と題して講演した。

 講演冒頭ではリクルートの広告ビジネスにおけるユーザー行動の変化を解説した。同社ではWebサイトへの集客を「サイトに集める力」、検索などの1次アクションから申し込みまでのアクションへ促すことを「サイトで動かす力」と称している。この動かす力でアクションを最大化することに注力していると説明。

 「ネットが普及する前はメディアの編集者の感性と編集力でユーザーを動かしてきた。しかし、ネットの普及とともにお金を払い目的を持って情報誌を買うユーザーよりも、検索などで偶然Webサイトに訪れるユーザーが増えたことで、感性や切り口だけではユーザーを動かすのは難しくなった」(小林氏)そこで、リクルートではユーザーの行動結果、すなわちログから施策を考えたという。

 次に、ログから分かるユーザーの行動の変化の具体例を紹介した。ある転職サイトではユーザーが1セッション(訪問)で何社に応募したのかを調べた。その結果、6割のユーザーは1セッションで1件の応募だったが、4割は1セッションで平均5件に応募していた。小林氏は「これまでの情報誌時代の感覚では、転職は人生で重要な分岐点。十分吟味して心に決めた1社に応募すると考えていたが、多くのユーザーが気軽にエントリーしていることが分かった」という。「これまでの成功体験に捉われず、ネットでのユーザーの行動を真摯(しんし)に受け止めるためのツールとしてログを活用している」と、客観的なデータから施策を考えることが重要とした。

 続いて同社が取り組んだ改善事例を紹介した。検索連動型広告の事例については、見出しとディスクリプション(説明文)の文言を変えることで30%以上CTR(クリック率)が向上したり、LPO(ランディングページ最適化)対策で22%コンバージョン率が向上したりしたという。「CTRは高いがCVR(コンバージョン率)が低いキーワードはLPOを行い、CVRは高いがCTRが低いキーワードは説明文を変えるなどして、CTRとCVRを共に高める」とリクルートが行った施策の基本的な考え方を明かした。

 続いて、エントリーフォームの改善についても言及した。不動産サイトでは資料請求時、そのユーザーが過去に閲覧した物件の情報を出すことでほかの物件の資料請求も促進てきた。また、必須項目を示す記号を「※」から「●」に変えることで離脱率を8%減少できたという。「エントリーフォームは最後の難関。エントリーフォームで入力までしたのに離脱するユーザーは多い。Webサイト全体を改修するのは労力がかかるが、エントリーフォームを改善するだけで効果が見込める」(小林氏)と少ない労力でもコンバージョン率を向上できることを示した。

 最後に小林氏は「ユーザーは常にさまざまな情報に触れている。大きな投資をして大きなリターンを狙うよりも、こうした小さな積み重ねが大切。Webサイトのトップページからの導線だけを見るのではなく、検索エンジンをトップページ的な役割としてネットを利用しているユーザーも多いと考え、LPOなどに力を注いでいる」と締めくくった。