●左から、オールアバウトのメディアプロデュース本部メディア企画部サーファーグループ マネジャーの白石俊哉氏、恒信印刷の代表取締役社長の吉田和彦氏、オウケイウェイヴのポータル事業部事業部長の河野高儀氏
●左から、オールアバウトのメディアプロデュース本部メディア企画部サーファーグループ マネジャーの白石俊哉氏、恒信印刷の代表取締役社長の吉田和彦氏、オウケイウェイヴのポータル事業部事業部長の河野高儀氏
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 「NET Marketing Forum Spring 2008」専門トラックBの最終パネルは、「SEOの対策と効果--Webサイト規模や運営体制で変わる成功へのハードル」と題して、SEO(検索エンジン最適化)を実施する上での課題と具体的な対策を議論した。

 モデレーターはSEM(検索エンジンマーケティング)大手アイレップの取締役SEM総合研究所所長の渡辺隆広氏。パネリストは、日本最大級のQ&Aサイト「OKWave」を運営するオウケイウェイヴのポータル事業部事業部長の河野高儀氏。総合情報サイト「AllAbout」を運営するオールアバウトのメディアプロデュース本部メディア企画部サーファーグループ マネジャーの白石俊哉氏。東京・板橋区の印刷会社、恒信印刷の代表取締役社長の吉田和彦氏。

●モデレーターを務めたアイレップの取締役SEM総合研究所所長の渡辺隆広氏
●モデレーターを務めたアイレップの取締役SEM総合研究所所長の渡辺隆広氏

 冒頭、モデレーターの渡辺氏が、「SEOのテクニックは様々なセミナーや書籍で取り上げられているが、いざ企業が取り組もうとすると、組織形態やビジネスモデルによって対策が大きく変わる。その差を浮き彫りにしながら、有効策を考えていきたい」とパネルディスカッションの趣旨を説明した。

 パネリストの三者はそれぞれ立場が異なっている。恒信印刷は、SEOに人手もコストもかけにくい「中小企業型」の代表。オールアバウトは、コンテンツの書き手であるガイドや専門家が1600人を超える「大企業型」の代表。オウケイウェイブは、100万人以上の会員による質問と回答がコンテンツとなっている「CGM(消費者生成メディア)型」の代表だ。

 本講演ではパネリストが順番に、自社のSEOに対する取り組みを説明した。

SEOでアクセス数や顧客獲得に成果

●オウケイウェイヴのポータル事業部事業部長の河野高儀氏
●オウケイウェイヴのポータル事業部事業部長の河野高儀氏

 オウケイウェイヴは2007年秋からSEO施策に本格的に取り組んだ。以前はカテゴリーの階層構成が大雑把だったためにサイトテーマがあいまいになり、コンテンツが豊富にありながら検索エンジンに認識されにくかった。そこでテーマを「ライフ」→「恋愛・人生相談」→「恋愛相談」という具合に、「大カテゴリー」「中カテゴリー」「小カテゴリー」の3段階に分類。カテゴリーURLも動的URLからディレクトリー階層構造にするなどの変更を加えた。

 効果はてきめんに表れ、Googleのインデックス数は3カ月で68万4000から795万へ約12倍増。主要キーワード32個のうち、10位以内が5個から12個に増加。また、対策前はクチコミや提携による集客がメーンで検索エンジン経由の流入は3分の1程度だったが、「現在は検索エンジン経由が9割以上に上っている」(河野氏)という。

SEOチームを社内に置くオールアバウト

●オールアバウトのメディアプロデュース本部メディア企画部サーファーグループ マネジャーの白石俊哉氏
●オールアバウトのメディアプロデュース本部メディア企画部サーファーグループ マネジャーの白石俊哉氏

 オールアバウトは、2002年という早い時期から「SEOチーム」を置いて取り組みをスタート。社外の専門家(ガイド)向けにSEO講習会を開催し、500人のガイドを束ねる20人ほどの社内のコンテンツプロデューサーも講習を受けて、SEOの意義と効果について理解を深めている。

 またSEOチームは、リニューアルや新コーナーの設置などに際して細かい問い合わせに対応するヘルプデスク機能を担い、メールマガジンのバックナンバー公開を提案するなど、「社内で啓蒙(けいもう)と協働に取り組んでいる」(白石氏)という。

社長自らSEOに取り組み、法人客の90%をSEO経由で

●恒信印刷の代表取締役社長の吉田和彦氏
●恒信印刷の代表取締役社長の吉田和彦氏

 恒信印刷は、2003年から吉田社長自らがSEOに取り組んできた。セミナーなどに参加して独学で勉強を重ね、現在、自社サイトのほかに印刷用語集や印刷裏技テクニックなどの専門サイトおよびブログを運営。コンテンツを強化して相互にリンクさせ、SEO強化を図っている。

 「印刷会社」をメーンキーワードに、自社の得意分野である「小冊子」「同人誌」などをページ内に盛り込み、検索エンジンで3位以内を実現。1日のアクセス数は200件弱から1000件超に5倍増。問い合わせ件数は2日に1件から1日10件へ20倍増という成果を上げている。法人客の90%は検索エンジン経由だ。また、ブログ「社長の成功日記」(http://blog.livedoor.jp/no1syatyou/)は3年前からほぼ毎日更新している。

「SEOの成果は何で測る?」に各社が回答

 各社の取り組み概要に続いて、モデレーターの渡辺氏が各社に、抱えている問題点や悩みについて質問した。 一定の成果を上げている3社であるが、それぞれに課題があり、パネルディスカッションはさながら「壇上“Q&A”相談会」の様相を呈した。

 オウケイウェイヴの河野氏は、「『教えて!goo』を筆頭にパートナーサイトが70サイトほどあってコンテンツを共有しているため、これを検索エンジンが重複コンテンツと判定して順位に影響しないか」と質問。渡辺氏は「ビジネス上の提携関係があるので問題はないが、すべてが上位表示されればユーザーの使い勝手が悪くなる。人気のない提携先は上位表示されにくいだろう」と回答した。

 「SEOの重要性が共有された反動か、検索順位に社内が一喜一憂しすぎるきらいがある」というオールアバウト白石氏の質問に対しては、「順位はそもそも変動するもの。プラスマイナス10位程度の変動なら気にせず放置でよい」(渡辺氏)とのアドバイスがあった。

 恒信印刷の吉田社長は、「ホームページ作成ソフトの『ホームページ・ビルダー』で450ページほど作りこんできたため、一斉更新に手間がかかる。思い切ってリニューアルしたいが、順位が落ちないか」と不安を訴えた。渡辺氏は、古いドメインが評価される傾向があるので新サイトの立ち上げは薦めにくい。今のドメインでCMS(コンテンツ管理システム)を導入する方がよく、1ページ目から脱落したらリスティグ広告を出すなどルールを決めてはどうか」と回答。過度のSEO依存は改める必要があることを訴えた。

 途中、会場の聴講者からも質問を募った。「SEOの成果を何で測っているか」の問いに、「アクセス増と、AllAboutドメインが上位表示されることによるブランディング効果」(オールアバウトの白石氏)、「お金をかけずに大日本印刷や凸版印刷より上位に表示されること」(恒信印刷の吉田氏)など、それぞれ回答があった。

 最後に渡辺氏が、昨今の米国企業の事例として、たくさんのキーワードをカテゴリー別に管理して集客の増減をチェックし、弱いカテゴリーには適宜リスティング広告を出稿する取り組みについて解説。検索結果の順位変動に翻弄(ほんろう)されないルール作り、リスク管理体制を取ることが必要であると説いて締めくくった。