写真1●マイスペースの代表取締役社長の大蘿 淳司氏
写真1●マイスペースの代表取締役社長の大蘿 淳司氏
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写真●2 Jストリームの代表取締役会長兼社長の白石 清氏
写真●2 Jストリームの代表取締役会長兼社長の白石 清氏
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写真3●本誌編集長の渡辺博則(左)がモデレーターを務め、大蘿氏、白石氏の両名がクロスメディア展開のポイントなどについて意見を交わした
写真3●本誌編集長の渡辺博則(左)がモデレーターを務め、大蘿氏、白石氏の両名がクロスメディア展開のポイントなどについて意見を交わした
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 2008年6月17日、ウェスティンホテル東京(東京都目黒区)で開催された「NET Marketing Forum Spring 2008」のNMFキーノートパネルでは米国発のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を運営するマイスペースの代表取締役社長の大蘿 淳司氏と、動画などリッチコンテンツの配信サービスを手がけるJストリームの代表取締役会長兼社長の白石 清氏が登壇。日経ネットマーケティング編集長の渡辺 博則がモデレータを務め、「クロスメディアメディアで築くエンゲージメント」と題したパネルディスカッションを行った。

 生活者との絆(きずな)を深める「エンゲージメント」はマーケッターにとって永遠の課題。その実現には、複数のメディアを活用するクロスメディアは必要不可欠になりつつある。このパネルディスカッションでは「CGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)」「ケータイ」「リッチ化」の3点にポイントを置き、各社のこれまでの取り組みとクロスメディアを活用する上での注意点などを議論した。

流すインターネットから創るインターネットへ

 まず、マイスペースの大蘿氏が、同社のSNSを活用した企業事例を交えながら、CGMの活用方法を説明した(写真1)。大蘿氏は、MySpaceの事業ビジョンを取り上げながら、「これまでのインターネットは流すインターネットだった。これからは創るインターネットになる」とネットの現状を解説。これまでの10年間、インターネットは情報をいかに効率よく流すかに注力してきたが、何かを生み出す役割は担えてなかった。しかし、多くの人が集うインターネットではコンテンツを生み出す力があるという。そして、「消費者と企業が何かを作り上げることがエンゲージメントを強化する」と、CGMがエンゲージメントを築く上で重要になっていると強調した。

 マイスペースの活用事例として、米コカ・コーラの「スプライト」の事例を紹介した。米コカ・コーラはマイスペース上に「LYMON(ライモン)」という架空のキャラクターを作り、スプライトのブランドを擬人化した。LYMONは、ターゲットのユーザーが喜ぶような音楽やコンテンツを集めてきてプレゼントする。企業が消費者へそれらをまくというのではなく、あくまでキャラクターが一生懸命集めてきて紹介するという対話型のコミュニケーションを実施した。

 「マイスペースで普段から行われているようなコミュニケーションを(企業が)することで、自然にユーザーに受け入れられ、結果的にブランドのファンを増やすことができた」という。「SNSを通じてリアルも巻き込み、消費者の行動を喚起して、変えていくことが本当のクロスメディア化と考えている」と締めくくった。

きちんと『クロス』しているか?

 続いて、Jストリームの白石氏が登壇(写真2)。クロスメディアでのネット活用について「きちんと『クロス』しているか?」「“クロスデバイス”~そのデバイスでリーチできるか?」「リッチ化」という3つの視点で講演した。

 まず、白石氏は、「きちんと『クロス』しているか?」について、「企業サイトや商品サイトにアクセスするきっかけは新聞、雑誌、テレビの各媒体と年代、性別の組み合わせで異なる。きちんとクロスさせるために、Webサイトへの誘導を促す媒体の選定が重要」と指摘した。

 続いて、ユーザーのネット検索の活用状況に関する調査データを紹介した。「週1回でもケータイで検索をするユーザーが32%おり、ケータイとパソコンをの両方を使う人も16%以上いる。ユーザーは時と場合によって臨機応変にデバイスを使い分けている」(白石氏)という。また、検索する目的は「趣味・娯楽の情報収集」「購入のための比較・検討」などが中心で、ケータイとパソコンでは差異がない。

 そういった活用状況も念頭において、クロスメディア展開の企画をすべきとした。また、最も活用されやすいテレビとWebサイトの連動においては、ユーザーはテレビCMとWebサイトを行き来するため、クロスするメディアの間を一つの世界観でつなげることが重要とした。

 次に、白石氏は「クロスメディアを語る上でクロスデバイスも考えるべき」と指摘。「ケータイ」、「iPhone」のようなPDA機器、「Wii」など多様化するデバイスも細かく考えていかなければならないとした。

 最後は「リッチ化」について説明した。ネットレイティングスのネットの利用時間に関する調査結果を示し、ページビュー(PV)は減少傾向にあるが、ネットの総利用時間は増加傾向にあるというデータを紹介。これにより「利用時間をWebサイトを評価する指標になる」との考えを示した。さらに、日本で利用されているWebサイトのランキングにおいて、「YouTube」はPVでは10位だが総利用時間は4位というデータを取り上げ、動画の普及が滞在時間を拡大させる重要なポイントになると解説した。また、Flashの活用でケータイサイトのリッチ化も進んでいる状況も説明した。

クロスメディア展開のポイントは

 最後のパネルディスカッションでは、大蘿氏、白石氏の両名が登壇、本誌の渡辺がモデレーターを務め、クロスメディア展開をする上でのポイント、最適なソリューションなどについて意見を交わした(写真3)。大蘿氏は、「クロスメディアというとWebサイト、紙、テレビというイメージがある。しかし、ユーザーとどうコミュニケーションするかを考えたときに、ユーザーに対して使うメディアの向き不向きを考えると、おのずとさまざまなメディアでプランニングするようになる。コミュニケーションをデザインして、それに合った手段を選ぶべき」とした。

 白石氏も、「(マーケッターが)ネットで何かをするときに、コミュニケーションデザインをおろそかにしがち。ケータイは若い女の子が多いからなどとデバイスに寄って考えたり、目先のデバイスにとらわれたりするのではなく、個人個人へのコミュニケーションデザインをすることが重要」と語った。