写真●ケイビーエムジェイ(KBMJ)執行役員インターネットプロダクト&マーケティング事業部長の和田順児氏
写真●ケイビーエムジェイ(KBMJ)執行役員インターネットプロダクト&マーケティング事業部長の和田順児氏
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 2008年6月17日に開催されたNET Marketing Forum Spring 2008において,ケイビーエムジェイ(KBMJ)執行役員インターネットプロダクト&マーケティング事業部長の和田順児氏は「勝ち残りをかけたWeb 2.0戦略~CGMやECサイトの在り方」と題した講演を行った。

 KBMJは慶応義塾大学発のベンチャー企業として2000年7月に創業。Web 2.0にかかわるプロダクトの開発と販売を中心に事業展開している。講演ではWeb 2.0にかかわるプロダクト開発の豊富な経験から,SNS活性化の条件とユーザー参加型ECサイトの有用性について解説した。

会員登録後の数分間で決まるSNSの利用価値

 まず,現状のネットサービスとその利用者のトレンドを分析。目的を持ってネットを利用する人たちが多かったとする従来のネット利用者動向と比べ,「無目的にサイトを回遊する利用者が増えてきた」(和田氏)。一方で,サービス提供者は商品購入など即座に閲覧者が何らかの行動を起こすことよりも「利用者の囲い込みを重視するようになってきた」(同)との見方を示した。

 こうしたネット利用者およびサービス提供者の変化は,相対的なネット利用時間を押しあげ,現状のネットビジネスの本流であるネット広告の市場規模の伸び率を上回っているという。従って,「Web 2.0が注目され始めた2005年からウェブサイトの数の伸び率が増加している。Web 2.0サイトが乱立する時代となった」(同)と指摘した。

 これを受け,「Web 2.0サイトはどのようにすれば乱立時代を勝ち残れるのか」(同)という観点からSNSとECサイトを成功させるために必要と考えている方程式を示した。

 まず,SNSではユーザーごとのマイページを情報ポータル化するように仕向けることが必要であるとした。利用者は会員登録後,「数分間でこのSNSが自分にとって利用価値があるか否かを見分ける」(同)という。登録しても,マイページに必要な情報がなかったり,全く情報がなければ,また次にこのSNSを利用するためのモチベーションにつながらない。また,必要な情報がなければ,そのSNSで何ができるのかも分からない。

 そのため,利用者の属性情報や行動履歴などを活用し,登録後すぐに必要な情報が掲載されている状況を演出することが何よりも重要であるとした。そのうえで,全文テキスト検索機能を実装するなどして検索サービスの使い勝手を向上し,ほかにも悪意ある投稿を排除するための投稿監視,利用者の相談に即座に応じられるメールサポートなどの必要性についても言及した。

 KBMJでは同社のSNS構築ASP「SNSエンジン」を30~40社に導入し,導入済み企業のSNS活性化を果たせているという。

無目的のネット利用者にいかに買ってもらうか

 次に,Amazonなどユーザー参加型のECサイトを「ソーシャルコマース」と定義し,今後のECサイト運営において欠かせない考え方であるとして紹介した。

 ソーシャルコマースに着目する背景は,前述した無目的な回遊を行うネット利用者が増えていると考えているためだ。「無目的な回遊をする人はネット利用者の57%というデータもある」(同)とし,「無目的のネット利用者にいかに買ってもらうかが今後のECサイトの課題」(同)とした。

 そのためにはSNSと同様,Amazonで提供している「あわせて買いたい」「この商品を買った人はこんな商品も買っています」のようなレコメンド機能が最も重要で,それをどう活用すればいいのかという点について事例を交えて解説した。

 ECサイトはサイトの構成上,トップページから流入してくる訪問者は商品カテゴリを経由して個別の商品にたどり着いたり,検索エンジン経由で直接商品ページにたどり着くという行動を辿るのが一般的。しかし,この訪問者の行動経路はそのサイトの売れ筋商品を訪れて,そこで目的の商品がなければ別のECサイトへ流れていってしまいがちである。従って,こうした売れ筋商品に終始してしまう利用者の導線に付加する形で,売れ筋ではないが訪問者が求めていそうな商品を表示するレコメンド機能の実装が売り上げの拡大につながるとした。

 具体的には,ジークレストが運営するオンラインゲーム「@games」内のショップで70社の導入実績があるKBMJの「パーソナライズド・レコメンダー」を活用することで,購入者数がレコメンド導入前と比べて25%増,売り上げが14%増加した。また,某情報サイトではサイト全体のページビューが導入前と比べて45%増となった。

 最後に,「あるサイトで流入経路別に最適な動画を配信したところ,直帰率が60%から40%に改善し,売り上げは前年比で180%増加した。こうしたちょっとした工夫で,サイトの売り上げは大きく変わってくる。こうした取り組みを実践し,かつ,トライアンドエラーで改善すべきところを改善していくことが,Web 2.0サイトが乱立する時代を生き残るためには欠かせない」(同)とした。

■変更履歴
記事掲載当初,ケイビーエムジェイの創業を2007年7月としていましたが、正しくは2000年7月です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/06/18 13:20]