米Mozilla Foundationは,2008年6月17日(米国時間)に最新版オープンソースWebブラウザ「Firefox 3」を公開し,ソフトウエア公開初日ダウンロード件数の世界記録樹立を目指す(関連記事:Mozilla,「Firefox 3」でソフト公開初日ダウンロード件数の世界記録樹立を目指す/Firefox 3のリリース日が6月17日に決定)。Firefox 3は,現行版に比べて処理速度とセキュリティが向上し,デザインが良くなる。筆者が使ってみた限りでは,プラットフォームを問わず利用できる最良のWebブラウザだと思う。

 Web閲覧時のナビゲーション操作部がより目立つといった外見上の変化に加え,拡張機能も改良された。ロケーション・バーを高機能化するとともに,登録/閲覧済みWebサイトを見つけやすいブックマーク/履歴管理構造を採用した。マルウエア配信用の悪質なWebサイトからパソコンを守る機能を内蔵するほか,数多くのアップデートが施された。

 Mozillaは,最新版リリースの話題作りとして公開日の6月17日を「Download Day」と定め,1日間のダウンロード件数で世界記録を作って「ギネスブック」への掲載を狙う。Firefox 3ダウンロード推進キャンペーンの詳細情報は,Webサイト「Spread Firefox」に掲載されている。

 デビュー当初のFirefoxは軽視されたWebブラウザだったが,今ではかなり目立つ存在に成長した。米Netscape Communicationsから10年前に別れたMozillaは,Webページ閲覧機能だけでなく,電子メールやネットニュース,チャット,Webページ編集といった機能まで備える複雑なNetscapeのWebブラウザ・スイートをベースに,オープンソース版ソフトウエアの開発を開始した(関連記事:AOLがNetscapeの歴史に事実上の幕,200万ドルの「手切れ金」でMozillaを解放)。

 ところが,Mozillaはソフトウエアが肥大化することを懸念し,中核開発グループがWebブラウザ「Mozilla」のレンダリング・エンジンで動くシンプルなWebブラウザの開発を2002年に始めた。この新Webブラウザの名前は最初「Phoenix」と呼ばれたが,間もなく「Firebird」に変わり,最終的にFirefoxと名付けられた。

 初版が2004年終わりにリリースされた当時,Firefoxは苦しい戦いを強いられた(関連記事:IEの寡占状態を崩せるか,オープンソース軽量WebブラウザFirefox1.0が正式リリース)。米Microsoftの「Internet Explorer(IE)」が,Webブラウザ市場の95%以上を掌握していたのだ。

 しかし,現在の世界市場シェアは,IEが73%を切り,Firefoxが18%以上に拡大した。さらに,Firefoxの市場シェアがもっと大きな国も多く,確実にユーザーを増やしてきた。Firefoxの成功は,営利目的100%子会社である米Mozillaの設立につながった(関連記事:米Mozilla Foundationが営利目的の子会社を設立,開発と配布に注力)。そのうえ,Webサイト開発者たちは,IEを使い続けているユーザーとFirefoxユーザーの双方に同様の操作環境を提供しようと,Webコンテンツを調整するようになった。

 これまでの成功はさておき,Firefoxは,モバイル環境からのインターネット利用が増える状況下で新たな課題を突きつけられている。Mozillaは,Firefoxのモバイル・バージョンをまだ持っていないのだ。おまけに,米AppleのWebブラウザ「Safari」が,同ブラウザのモバイル版を搭載するスマートフォン「iPhone」の効果で急成長した。当然Mozillaは,モバイル版Firefoxの開発に取り組み,次の戦いに備えている。

 Firefox 3については,SuperSite for Windowsに掲載した筆者のレビュー記事「Mozilla Firefox 3 Review」(英文)を読んでいただきたい。