都内で開催された通信事業者の会合に参加したソフトバンクの孫 正義社長は2008年6月13日,7月11日に発売するiPhoneについて報道陣の質問に答えた。価格設定や販売方法について説明したほか,アップルとの交渉を経て販売契約を獲得したiPhoneの魅力について語った。主な発言は下記の通り。
米国では199ドル,299ドルという価格だが,国内でどう設定するか。
価格の詳細は発表できない。後日発表する。従来から投入されている他メーカーの高機能モデルよりも,魅力的な価格となるだろう。ただし,ユーザーのさまざまな要望にiPhoneが100%応えられるわけではない。複数の端末を適材適所で用意する。通話料金やデータ通信の料金は未定。今月中に発表したい。
在庫は潤沢に用意できるのか。販売方法は。
アップルが世界的に製品を用意することになるので,潤沢ではない可能性がある。発売直後はお待たせするかもしれない。製品は,ソフトバンクショップのほか,アップルストアでも販売する。アップルとの契約上では,国内で独占販売とはなっていない。ただ,実質的には我々が優位な状態にあり,独占といってもいい。
日本独自に機能を搭載する可能性はあるか。
ハード的にボタンを追加するなどはあり得ない。タッチパッド上で日本特有の入出力ツールを用意することは考えられる。そのほかは,数多くの専用アプリケーションやゲームを追加していく。アプリケーションはiTunesストア経由で購入できる。おサイフケータイがないといった機能の不足を指摘する声もあるようだが,おサイフケータイは世界的に使われている機能ではない。コストを上げて搭載するものではない。
他社にさきがけてiPhoneの販売契約を獲得できた理由は。
精一杯に努力を尽くした結果だと考えている。
実際にiPhoneを触ってどう感じたか。
世界観が素晴らしい。パソコンとのデータ連携ツール「MobileMe」を用意したほか,Exchange Serverにも対応してビジネス用途にも対応した。ゲームなど多くのアプリケーションが登場するだろう。
オブジェクト指向のSDKも注目に値する。マウス操作で何十分と短い時間でアプリケーションが作成できるのは驚きだ。従来,携帯電話のアプリケーションは閉じたプラットフォームで作られており,新しい機種が登場すると作り直す必要があった。iPhoneのSDKは,既に20数万のエンジニアがダウンロードしたという。作成したアプリケーションはiTunesストアで売れる。流通段階まで提供されている点が魅力だ。
こうしたOSや流通段階のシステムを一から作るとなれば,5年はかかるだろう。iPhoneをまねた端末が登場してくるかもしれないが,iPhoneのようなSDKやiTunesストアを含めたシステムはない。iTunesと組み合わせて利便性を高めたiPodと,単純なMP3プレーヤーで大きく差がついたが,同じような位置づけとなるだろう。
従来からSymbian OSやWindows MobileといったOSもあったが,iPhoneは数十年の技術の蓄積があるMac OSをベースにしているという優位性がある。ファームウエアについても従来の携帯電話とは思想が違う。ファームウエアをアップグレードして,機能を追加できる。柔軟性はパソコンと同レベルだ。