写真●NTTデータの山下徹社長
写真●NTTデータの山下徹社長
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 NTTデータの山下徹代表取締役社長は2008年6月12日、千葉・幕張メッセで開催中のInterop Tokyo 2008で基調講演に登壇した。ICTプラットフォームの潮流について「これまではホストコンピュータによる集中化、オープン化による分散化、オープン系システムの小型化による集中化ときた。次のステップは分散ではなく『さらなる集中』に向かう」と予想した。

 ICTプラットフォームのさらなる集中が起こるのは、「企業を取り巻く環境の変化のスピードが速くなっている」(山下社長)からだ。山下社長は一例として、1970年代はヒット商品の半分は5年以上の寿命があったが、2000年代には5年以上の寿命を持つ商品は10%以下になったことを挙げた。こうした環境の変化をチャンスに変えるために、「手前勝手な言い方だがICTが重要になる」(山下社長)と主張する。

 変化に強いICTプラットフォームとは、(1)短期開発、(2)柔軟性、(3)信頼性・安全性を満たすもの。これを実現する技術として、NGN(次世代ネットワーク)、仮想化、SOA(サービス指向アーキテクチャ)、データセンターのアウトソーシングを挙げた。山下社長はこれらの技術を3段階に分けて導入すべきという。

 まず第1段階ではNGNと仮想化を導入して、部門や業務ごとに分散したサーバーを集約する。「仮想化だけでもサーバーを統合できるが、低コストで品質保証ができ、なりすまし防止も可能なNGNと組み合わせることでサーバー集約の効果が倍増する」(山下社長)。例えば、NGNを使った回線情報による認証を導入することで、経営幹部はどこからでも経営情報システムにアクセスできる。

 次の段階でSOAを導入してアプリケーションを作り替える。「例えば、人事情報は様々なシステムで使っている。SOAベースにすることで、人事情報の変更をほぼリアルタイムに他のシステムに反映できる」(山下社長)。SOAベースのシステムの例としてNTTデータイントラマートが手がけたキッコーマンの旅費精算システムを挙げ「担当者の業務工数を約50%削減した」という。

 最終段階では、データセンターの運用を外部にアウトソーシングする。データセンターのアウトソーシングでは、すでにサーバーのハウジングやホスティングがある。山下社長はデータセンターの建物やサーバーのハードウエアにとどまらず、OSとミドルウエアまで含めたIT基盤を運用サービス付きでアウトソーシングすべきとした。「自社の競争力と関係のない部分は他社に任せてしまえばいい」(山下社長)からだ。

 以上のようにICTプラットフォームを変えることで「コスト削減を主眼にした“守り”のICTから、業務革新を目的とした“攻め”のICTに変革させられる」という。NGNと仮想化でITコストを低減し、SOAでシステムに柔軟性を持たせる。そしてデータセンターをアウトソーシングすることで、競争力を創出するためのシステム企画に注力できるというわけだ。