写真●基調講演で話す慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授
写真●基調講演で話す慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授
[画像のクリックで拡大表示]

 「Interop Tokyo 2008」初日となる2008年6月11日の基調講演に,慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授が登壇した。講演のテーマは,「地球とインターネット~人と社会と科学技術のイノベーション~」。エンドユーザーが接するデバイスとネットワーク,バックボーン,そしてネットワークを介した映像配信に最近起こっている変化を見下ろし,先進的なインターネット環境を持つ日本が世界の中で果たすべき役割を論じた。

 エンドユーザーが使う携帯電話は時計やカメラ,ビデオカメラ,GPSなどを搭載し「時空間を示すデバイス」に進化。おサイフケータイなどのNFC(近距離無線通信)により「ひっつけて使う場合は相手を信用している」という人間的なコミュニケーション形態が形成され始めるとともに,ワンセグ搭載機が3000万を超え,放送電波を受け取る端末になったと解説した。一方家庭で使うに情報機器は,インターネット接続機能を持つテレビが主人公になってきており,健康,環境,家事などのアプリケーションが家庭に出てくる中で大きな役割を果たすのではないかと予測した。

 バックボーンでは,すべての通信機能を光で実現するフォトニック・ネットワークが進化しており,東京には“光ファイバの絨毯(じゅうたん)”ができるという見方をしてみようと述べた(いくつかの区ではそれに近い状況にあるという)。これは「どこと広帯域で通信していようと,それが急速に伸びても耐えられるネットワーク基盤を作る動き」であり,会場内のデモンストレーション・ネットワーク「ShowNet」も,今回はこの光の絨毯を意識した構成にしていると解説した。具体的には,東京・大手町にあるIXや学術ネットワークなどとの対外接続機能の一部を会場のある幕張に移している。

 また総務省が公開しているインターネット・トラフィックの増加傾向にも言及。P2Pのトラフィックも一定量はあるが,朝と晩にグラフのピークが見られていることは,人間が操作していることを表している。インターネットの使い方が変わるとネットワーク・トラフィックのマネジメントも変わるとの指摘も行った。「よく見ると,トラフィックのピークは夜中からより早い時間帯に移動してきている。これは家庭の中のインターネットで使われているアプリケーションが変わってきているのではないかという分析もできる」(村井教授)。

 ネットワークを使った映像配信の注目分野としては,デジタル・サイネージとIPTVを挙げた。デジタル・サイネージについては,特別講演が催されるなど,Interopでも重要視されている分野の一つ。ディスプレイやプロジェクタをどうつなぎどう映像を送るかという点で,ネットワークが潜在的に果たす役割は大きい。IPTVでは,オープン・インターネットによる映像配信と閉域ネットワークによる映像配信の違いを,アクトビラとひかりTVを実際に見せながら解説した。

 また講演のメイン・テーマである地球とインターネットについて,光ファイバは太平洋と大西洋にはたくさんあるが,その間をつなぐものはそうではないとして,日本とロシア,シンガポール,インド,中東,アフリカ,欧州を結ぶ線の必要性を強調。時差が6時間以内の地域は,ネットワークで結ぶことで一日のうち数時間は同時に仕事ができることから,その意義は大きいと指摘した。