総務省は,平成19年度電波の利用状況調査の評価結果(案)に対する意見募集結果を公表した(発表資料)。焦点となったのは800MHz帯で利用されているFPUの取り扱いである。具体的には,770M~806MHzの36MHz幅を利用する。放送事業者によるテレビ中継用であり,主にはマラソン中継などに利用されている。

 移動体通信事業者および関連会社からは,3.9G(第3.9世代移動体通信システム)での利用をにらみ,この周波数を移動体通信に利用できるようにすべきであるという意見が相次いだ。例えばソフトバンクグループは,1/3程度は移動体通信に利用できるようにすべきであると主張する。クアルコムジャパンは,他の代替手段を検討すべきと指摘している。NTTドコモは,800MHz帯FPUを特定していないものの,「700MHz帯と900MHz帯をペアで効率的に利用可能とするための具体的検討の早期開始を希望する」と述べた。

 こうした意見が出る背景には,大きく2点ある。一つは,800MHz帯FPUの局数が少なく実際に利用もマラソン中継など限定されていることを挙げられる。もう一つは,アナログ放送の終了(実際には,デジタル放送の周波数リパッキング終了後)によって2012年から利用可能になる周波数のうち,20MHz幅(710M~730MHz)がITSに利用されることになったためである。

 こうした意見に対して,放送業界からは,800MHz帯の利用継続を訴える意見が相次いだ。例えば,日本民間放送連盟は,「報道取材や移動中継に欠かせない伝送手段である」,「800MHz帯の有効利用には異存はないが,狭帯域化については放送素材としての品質確保に加えて低遅延が必須であることを念頭に慎重な技術検討を進めるべき」と主張している。総務省は,同周波数は放送中継にも欠かせない伝送手段となっており,局数だけだ判断しないとした上で,「800MHz帯をFPUに割り当てることは適切」,「1/3程度の周波数を移動体通信サービスに割り当てるのは困難」という考え方を示した。

 このほか,800MHz帯FPU以外では,(1)800MHz帯MCA陸上移動通信は新たな周波数への移行先や使用期限などを明確にすべき,(2)パーソナル無線は,使用期限を大幅に前倒しすべき,(3)1.5GHz帯MCA陸上移動通信の周波数割り当ては,MCAデジタル再編について早期に時期を明確にするなど,さらに踏み込んだ検討を行うべき,と指摘した。