米Yahoo!の株主であるCarl Icahn氏は,米Microsoftに1株当たり34.75ドルの売却提案を持ちかけるよう,Yahoo!会長のRoy Bostock氏に要請する公開書簡を米国時間2008年6月6日に公開した。

 MicrosoftによるYahoo!買収案が白紙撤回(関連記事:【速報】Microsoft,Yahoo!への買収提案を撤回)したことに不満を持つIcahn氏は,Yahoo!の現取締役を退陣させ,Microsoftとの取引に前向きな新役員を送り込むため,委任状争奪戦を仕掛けている(関連記事:投資家Icahn氏がYahoo!会長にMicrosoftとの合併を提言,委任状争奪戦へ)。

 同氏は,6月2日にデラウェア衡平法裁判所が下した判決によって明らかになった情報(関連記事:Yahoo!の株主訴訟で情報公開命じる判決,証拠資料で買収対策が明らかに)をもとに,Yahoo!の退職制度プランを「1万4000人の正社員に辞職する権利と相当額の退職金を与えるという,Yang氏が巧妙に仕組んだ防衛策だ」と批判する公開書簡を6月2日に送っていた。同氏は,退職制度プランを撤廃すればMicrosoftを再び交渉の場に呼び戻せるかもしれないとの考えを示し,「Microsoftとの合併が,短期的にはそうではないかもしれないが,長期的に見てYahoo!を救う唯一の手段だ」と主張した。

 これに対してBostock氏は「Icahn氏は事実をゆがめている」と反論。「Icahn氏は,MicrosoftがYahoo!全体を買収することを再提案すると考えているようだが,理解しがたいことだ。Microsoftは当社と市場に向けて,当社のすべてを買収することにはもう関心がないというメッセージを送っている」と述べた(関連記事:「Icahn氏は事実を歪めている」,Yahoo!会長が反論)。

 Icahn氏は今回,Bostock氏の返答を受けて,「Bostock氏こそ事実を歪曲している。退職金プランは,Microsoftによる買収を妨害するポイズン・ピルだ」と再度非難した。また,8月1日に開催される年次株主総会において同社取締役の入れ替えが実現した場合,退職金プランを撤廃して別の制度を導入すること,現CEOのJerry Yang氏を退任させて新CEOを任命すること,Microsoftに友好的な売却提案を行うこと,さらにMicrosoftが提案に応じなかった場合は米Googleとの取引を検討することを,新取締役会に勧めるとしている。

 一方Yahoo!はこれに対する声明を同日発表し,「Icahn氏の退職制度プラン撤廃案はYahoo!を動揺させ,株主にとって最良の利益にならないことは確かだ。また,Microsoftへの売却提示額を公表することは思慮に欠けている」と批判した。最後に「何度も述べてきたとおり,株主にとって最良の利益になるならば,いかなる提案に対しても門戸を開いている」と付け加えた。

[Icahn氏の公開書簡]
[Bostock氏の声明]