米MicrosoftのConnected Systems DivisionでProduct Management担当Directorを務めるSteven Martin氏
米MicrosoftのConnected Systems DivisionでProduct Management担当Directorを務めるSteven Martin氏
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 「ユーザー企業だけでなく,ISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)にも,Microsoftのクラウド・コンピューティングを提供したい。既に500万人いる.NET開発者に,オンプレミス(据え置き型)でもクラウドでも両方で通用する開発手法を提供するのがMicrosoftの使命だ」--。米MicrosoftのConnected Systems DivisionでProduct Management担当Directorを務めるSteven Martin氏(写真)は,米国オーランドで開催中の「TechEd Developers 2008」でこう語る。

 Martin氏は,Microsoftが今後提供するクラウド・コンピューティングに関して,3つの分類が可能だと指摘する。1つ目は,米Amazonが提供している「Amazon EC2」のような,仮想マシンをユーザーに直接提供する「ローレベル・プラットフォーム」である。

 2つ目は「Amazon S3」や「SQL Server Data Services」(Microsoftが2009年上半期にリリースする予定のストレージ・サービス)のような,アプリケーションが利用するインフラを提供する「インフラストラクチャ」である。これにはストレージ・サービスだけでなく,「BizTalk Services」のようなアプリケーションを連携するメッセージング・サービスや,「Windows Live ID」のようなシングル・サインオンを実現する統合ID基盤なども含まれると語る。

 3つ目は「アプリケーション」で,Webアプリケーションやホスティング・アプリケーションをユーザーに提供することも,クラウド・コンピューティングの一種だととらえている。

 現在Microsoftでは,「インフラストラクチャ」と「アプリケーション」のみサービスを提供したり計画したりしているが,Martin氏は「全ての可能性を検討している」とし,「(Amazon EC2のように)顧客にとってより制約の少ないサービスを提供したい」と語る。

 クラウド・コンピューティングに関するMicrosoftの目標は単純で「企業顧客の投資支出を変えることだ」(Martin氏)と言う。つまり,現在アプリケーションを利用するためには,ハードウエアやソフトウエアの購入(投資)が必要だが,インフラストラクチャやアプリケーションをサービスとして企業が利用するようになれば,投資は不要になる。企業にとっては機敏なIT利用が可能になり,「それによってIT支出自体がより活性化する」(Martin氏)と考えているという。

 またMartin氏は冒頭に紹介した通り「ISVにもクラウドを提供したい」と語る。これは,多くのスタートアップ(ベンチャー企業)が既に,Amazon EC2のようなクラウド・コンピューティングのサービスを利用していることを意識した発言だが,「オンプレミス(据え置き型)とクラウドとで,同じ開発手法でアプリケーションを開発できるようにする。そうすれば,ISVはインフラストラクチャを意識せずに,アプリケーションを開発し,提供できるようになる。

 現在,7万7000社のISVが存在するが,売り上げの80%は上位の2000社が占めている。これは,パッケージ・ソフトの販売が難しいためでもある。Microsoftのクラウドを利用したサービスを開発すれば,より容易に顧客にソフトウエアを提供できるようになる」(Martin氏)と,ISVにとってもクラウド利用のメリットを訴えた。

 Microsoftでは,オンプレミスとクラウドの双方に適用できる新しいプログラミング・モデルを提供する開発ツール群として「Oslo」(開発コード名)を開発している。「現在,800万人の開発者のうち,500万人が.NET開発者だ。この開発者に,よりシンプルなプログラミング・モデルを提供するのがOsloだ」とMartin氏は語る。

 Martin氏によればOsloは,「ユニファイド・リポジトリ」「モデリング言語」「モデリング・ツール」の3つを開発者に提供するプロジェクトだという。オンプレミス型のSQL Serverやクラウド型の「SQL Server Data Services」といったリポジトリを,BizTalk ServerやBizTalk Servicesで統合できるようにし,開発ツール「Visual Studio」で「UML」のようなモデリング言語(言語自体はMicrosoftが開発する)を使ってアプリケーションを開発できるようにすることが,Osloプロジェクトの全貌になると思われる。

 MicrosoftではOsloプロジェクトには,SQL Server Data ServicesやBizTalk Servicesのほかに,管理ツール「System Center」やVisual Studioの新バージョンが含まれると説明している。Osloの詳細は,2008年10月に開催する「PDC(Professional Developers Conference) 2008」で明らかになる予定だ。