日本郵船グループのMTIと三菱自動車工業は、野村総合研究所と共同で、アクティブ型無線ICタグを使った完成車物流の効率化に向けた日欧間の実証実験に乗り出す。自動車専用船による国内外の物流において、車両1台ごとの所在を正確に把握し、国内販売店からのオーダー変更や、各国の需要変動などに柔軟に対応できるようにする。納車にかかる期間を短縮し、顧客満足度を上げる狙いがある。同時に、港の近くの物流拠点(カープール)で自動車の所在をリアルタイムに把握し、棚卸しや不明車探索の効率化を図る。

 国内外に海上輸送する完成車を一時保管するカープールは、三菱自動車の水島製作所向けの場合で3カ所あり、合計約2万台の駐車スペースが存在する。このため個々の自動車の所在を管理するのは、大変な手間がかかっている。

 あるとき沖縄の販売店から、特定の車種の注文があったとする。カープールに届いている自動車のうち、別の仕向け地向けのものを、沖縄向けに切り替えれば、顧客にいち早く納入できる。しかし、自動車の仕向け地はバーコードを印刷した紙の伝票で管理している。仕向け地を変えるには、その自動車をカープール内で探し出し、伝票を張り替える必要があった。現実的には、すべての変更要求に対応するは難しかったという。

 この紙の伝票をアクティブ型ICタグに置き換えれば、そのIDにひも付けられた仕向け地をシステム上で変更するだけで済む。船舶へは1台ずつ運転して積み込むため、ドライバに積み込むべき自動車の所在を1台ずつ指定すれば、仕向け地ごとに仕分けられる。船舶に積む前の検品作業も、1台ずつバーコードを読むよりも効率化できる。

 海外輸出の場合には、欧州の場合で輸送に1カ月程度かかり、その間に現地の需要が変動することも多い。欧州に着いた後に、どの国へ輸送するかもICタグで簡単に切り替えられるようにする。

 海洋上に存在する自動車の在庫は、「常時800万台程度ある」(MTI技術戦略グループの石澤直孝プロジェクトマネージャー)という。ICタグを使えば、それらの自動車がどの船舶に載っていて、どこに向かっているかをリアルタイムに把握できるようになる。需要の変動に柔軟に対応できる高度な物流システムの構築が可能になる。