総務省は2008年5月30日,2011年以降に開始予定の新たなBSデジタル放送に関する委託放送業務の認定の在り方に関する基本方針案を公表した(発表資料)。総務省は基本方針案において,新たなBSデジタル放送と東経110度CS放送を「東経110度衛星デジタル放送」(仮称)として統合し,普及政策を一体化する方針を示した。さらに,(1)マスメディア集中排除原則における取り扱い,(2)高画質化の推進,(3)放送番組の多様性確保,(4)超高画質映像「スーパーハイビジョン」(SHV)の伝送実験の取り扱い――についてそれぞれ総務省の基本方針を示した。

 (1)では,新たなBSデジタル放送と東経110度CS放送の統合に伴い,マスメディア集中排除原則の取り扱いを一本化する考え方を示した。これにより衛星放送の委託放送事業者は,東経110度衛星デジタル放送を行う際に,最大でトランスポンダ(電波中継器)4本分の伝送容量を利用できるようになる(トラポン1本の伝送容量は48スロット)。現行のBSデジタル放送では,委託放送事業者は最大で24スロット分の伝送容量しか利用できない。放送事業者は,新たなBSデジタル放送の放送波を使い,より多くのチャンネルを放送できるようになる。

 (2)の高画質化の推進については,「東経110度衛星デジタル放送ではHDTV(ハイビジョン)放送を中心とする普及政策を採用する」とした。HDTV放送の水平方向の画素数を1920とするか1440とするかについては,「原則として申請者の選択に委ねる」という姿勢を示した。現在,BSデジタルのHDTV放送の水平方向画素数は1920あるいは1440で,地上デジタル放送のHDTV放送は1440である。放送事業者は画質やチャンネル数の兼ね合いでいずれかを選択することになる。ラジオ放送とデータ放送については,「周波数事情を勘案して可能な場合に限り,周波数を割り当てることとする」とした。さらに既存のチャンネルの画質向上のために周波数を割り当てることについては,「特に排除しない」方針である。

 (3)の放送番組の多様性確保に関しては,「東経110度衛星デジタル放送全体として,幅広い分野の多様な放送番組が確保されるよう配慮する」とした。放送時間全体において広告放送の占める割合が一定割合を上回る無料放送の開始を望む事業からの申請については,「周波数事情を勘案して可能な場合に限り,周波数を割り当てる」姿勢を示した。広告収入を主な収益源とする無料放送の開始を目指す事業者が,東経110度衛星デジタル放送用周波数の割り当てを受けるのは簡単ではなさそうだ。

 (4)のSHVの伝送実験については,「将来の放送技術の開発・実用化のための実験については,現時点ではまだ視聴者ニーズを十分に把握するに至っていない」とした。そのうえで,「周波数事情を勘案して可能な場合に限り,周波数を割り当てることとする」という方針を示した。

 総務省は2008年5月31日に,この基本方針案に対する意見募集を開始する。意見は2008年6月30日まで受け付ける。(長谷川博=hhasegaw@nikkeibp.co.jp)
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