【グリーンIT国際シンポジウム】環境バリュー・チェーンを支えるのはIT---パネル・ディスカッションから2008年5月29日,東京都内で開催されたグリーンIT国際シンポジウム会場で,国内大手IT企業3社の環境関連技術・事業開発の責任者と経済産業省商務情報政策局の住田孝之情報通信機器課長によるパネル・ディスカッションが行われた。電気通信大学電気通信学部システム工学科の新誠一教授の司会の下,各パネリストが環境負荷削減の取り組み内容を紹介すると共に,今後取り組むべき課題について議論した。 経産省の住田課長は,環境への貢献が社会全体に見える仕組みづくりの重要性を訴えた。「例えば,環境負荷の低いエアコンを開発しヒットさせたメーカーは,製品を大量に製造したことで二酸化炭素排出量が増える。その分販売が伸び悩んだ競合メーカーの方は,排出量が減る。これではおかしい。使う段階や流通段階での環境貢献も織り込んだ評価の仕組みを考えるべきだ」。 富士通の伊東千秋代表取締役副社長は,「IT産業は全産業のバックボーンでもある。あらゆる業種の環境負荷低減に対して関わる責任がある」と語った。同社自身,企業向けパソコンの受注生産における納期を,3日から4日に伸ばした“実績”がある。「当初は2日に縮めようとしていたが,トラックを空で走らせることが増えると分かり,断念した」という。その代わり,輸送手段を自動車から鉄道に切り替えることで環境負荷を低減した。伊東副社長「納期が4日に延びた理由を,営業がお客様に説明するのだが,大抵の場合分かってもらえる」(伊東副社長)。 NTTデータの山田伸一常務執行役員技術開発本部長は,10月から開始予定の「グリーンデータセンター」と呼ぶサービスを紹介した。仮想化技術やサーバーの高密度化,空調の効率化,電力供給方法の見直し,といった方法により,データセンター全体の環境負荷を下げるサービスである。「現在都内のデータセンターで試行中だが,30%以上の改善が可能とみている」とする。 同社は,社員の在宅勤務を推進するという形で環境負荷の削減を図っている。「セキュリティという課題がありなかなか進まなかったが,シンクライアントを独自開発したことで解決した」(同)。一昨年から試行を始め,既に正式な制度として運用しており,200人程度の利用で年間5400kgの削減効果が出ている。「全社に広げれば年間215トンの削減になる」見込みだ。 日本アイ・ビー・エムの久世和資・未来価値創造事業執行役員は,1971年にIBMが設定したというポリシーを紹介した。「一つは各国の環境基準以上のレベルを守っていくこと,もう一つは,問題が起きたらオープンにしていくこと」である。これらを守りながら企業活動を続けるには,システムの力が不可欠だったと語る。 ストックホルム市でIBMが他の企業と連携して構築中という渋滞対策の仕組みでも,システムが重要な役割を果たしている。混雑する時間帯には,中心地に出入りする車に対し,1回150〜300円を課金するというものだが,2006年7月からの実証実験で渋滞が大きく解消され,その後の住民投票では8割が支持したという。「この仕組みの裏には,課金システムやコールセンターなどのITが動いている」(久世執行役員)。 パネリストが共通に指摘した課題は「消費者など,社会全体を巻き込むことの必然性と難しさ」である。日本IBMの久世執行役員は「何かの経済的合理性がないと消費者も企業も動かないのではないか。消費者が環境に貢献したときにインセンティブをどうするか。単純な仕組みでは対応できない問題だ」と指摘する。経産省の住田課長は「頭脳ゲームでもスポーツでも,がんばった結果がみえて褒められることで広がる。そういう仕組みを作れないか。よいアイデアを公募したい」と呼びかけた。 |