写真1●Googleのエンジニアリング担当Vice PresidentであるVic Gundotra氏
写真1●Googleのエンジニアリング担当Vice PresidentであるVic Gundotra氏
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 米Googleは2008年5月28日(米国時間),米国サンフランシスコで開発者会議「Google I/O」を開催し,「Google App Engine」の一般提供などを発表した。同社のエンジニアリング担当Vice PresidentであるVic Gundotra氏(写真1)は基調講演で,「われわれは,クラウドを誰もが入手可能なものにする」と力説した。

 Googleは今回の基調講演に合わせて,(1)Google App Engineの料金制度や新API,(2)米MySpaceがWebメッセージ・サービスにGoogleのWebアプリケーションをオフラインで利用する技術「Gears」を採用したこと,(3)2008年下期にリリースする予定の携帯電話機プラットフォーム「Android」の最新デモ,(4)「Eclipse」といったJavaの開発環境(IDE)を使ってAjaxアプリケーションを開発できる「Google Web Toolkit」の最新版「バージョン1.5」などを発表している。

 これらの製品やサービスは,Google App Engineが従量課金制である以外は,いずれも無料またはオープンソースとして開発者に提供する。同社のこのような姿勢についてGundotra氏は,「クラウドをより入手可能(Accessible)なものに,クライアント・コンピュータをよりパワフルなものにする取り組みだ」と強調する。

写真2●Googleが「オープンWebプラットフォーム戦略」を採る理由
写真2●Googleが「オープンWebプラットフォーム戦略」を採る理由
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 Gundotra氏はまた,Googleが同社のコンピュータ・クラウドを一般の開発者に開放したり,開発ツールや携帯電話機プラットフォームを無償で公開したりするような「オープンWebプラットフォーム戦略」を採る理由も説明した。Gundotra氏は,「Webプラットフォームをオープンにすれば,リッチなWebアプリケーションが増え,Webアプリケーションを使用するユーザーが増える。そうなるとWebの利用がますます盛んになり,結果としてGoogleの収入が増える」と語り,コンピュータ利用の中心をWebにシフトすることが,Googleの利益につながるのだと述べた(写真2)。

 以下,今回の基調講演で発表されたサービスや技術の詳細をレポートしよう。

メモリー・キャッシュ機能などをGoogle App Engineに追加

 Google App Engineは,開発者が独自に開発したアプリケーションを,Googleのアプリケーション・インフラを使用して実行,公開できるサービスである。2008年4月7日(米国時間)に概要を公開して以来,これまでは限られた数の開発者に対して無料でサービスを提供していたが,5月28日にいよいよサービスを本格稼働し,料金体系を発表した。

 これまでと同様,500Mバイトまでのストレージ利用または月間500万ページ・ビューまでのWebアプリケーションの利用に関しては,無料でサービスを提供する。それ以上の使用に関しては,プロセサ1コアにつき1時間当たり10~12セント,ストレージ容量1Gバイトにつき1カ月当たり15~18セント,Webサーバーから発信する通信に関して転送量1Gバイト当たり11~13セント,Webサーバーが受信する通信に関して転送量1Gバイト当たり9~11セントをそれぞれ課金する。

 またGoogleは今回,Google App Engineに2つの機能をAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)として追加すると発表した。1つはアプリケーションが利用するデータをメモリーにキャッシュする「Memcache API 」で,もう1つは写真などの画像に関して,サイズを変更したり回転したり反転したりする「Image Manipulation API」である。

MySpaceのメッセージ機能がオフライン利用可能に

写真3●Gearsを採用することでオフライン利用が可能になったMySpaceのメッセージ・サービス
写真3●Gearsを採用することでオフライン利用が可能になったMySpaceのメッセージ・サービス
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 Webアプリケーションをオフラインで利用可能にする技術「Gears」に関しては,ソーシャル・ネットワーク・サービス大手のMySpaceが同機能を採用したことが発表された。Gearsは,Webアプリケーションのデータを格納するSQLデータベースをWebブラウザ側に持たせることで,Webアプリケーションのオフライン利用を実現するもの。MySpaceはGearsを採用することで,ユーザー間でやり取りしたメッセージを,クライアント・コンピュータにバックアップしたり,オフラインで検索,閲覧したりできるようにした(写真3)。

タッチパネル搭載Androidでストリート・ビューをデモ

写真4●基調講演で披露されたタッチパネル搭載Android
写真4●基調講演で披露されたタッチパネル搭載Android
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 同社が2008年下期にリリースする予定の携帯電話機プラットフォーム「Android」に関しては,進ちょく状況をデモで示した(写真4)。今回のデモは,米Qualcomm製プロセサ「7201A」やタッチパネルを搭載する台湾HTC製端末で実行した。「Google Maps」がAndroidで動作するだけでなく,ストリート・ビュー(道路から見える風景を立体的な写真で表示する機能)も利用できることなどを示した。なおAndroidのデモに関しては,今後ITproにて,動画入りの記事で詳しくレポートする予定だ。

 このほか基調講演で同社は,Java用の統合開発環境(IDE)を使ってAjaxアプリケーションが開発できるツール「Google Web Toolkit」の最新バージョン「1.5」もデモしている。Google Web Toolkitは,EclipseのようなIDEで開発したJavaのソースコードから,JavaScriptのアプリケーションを作り出すツールである。最新版では言語として「Java 5」に対応したほか,パフォーマンスなどの改善が図られたとしている。