CSCIのローリー・ワイグル代表
CSCIのローリー・ワイグル代表
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 コンピュータの省エネルギー化を目指す非営利団体「クライメート・セイバーズ・コンピューティング・イニシアチブ(CSCI)」が,2008年5月28日に都内で記者会見を行った。CSCIは,米グーグルや米インテルを中心に,大手IT企業やWWF(世界自然保護基金)などが参加して2007年6月に設立された。

 同イニシアチブ代表で,米インテル コーポレーションのエコ・テクノロジー推進本部長でもあるローリー・ワイグル氏は,CSCIの最近の取り組みと成果,今後の計画について説明した。発言の要旨は以下の通り。

 我々は2つのことにフォーカスしている。1つはコンピュータ本体(PCやサーバー)の電力効率の改善であり,もう1つは電源管理の推進だ。これだけでも非常に大きな効果が期待できる。具体的には,2010年までには5400万トンの二酸化炭素を削減できるとみており,これは自動車を毎年1100万台削減するのと同じ効果がある。

 コンピュータの中でも特に問題なのは,デスクトップPCだ。驚くべきことに,コンセントから供給される電力のうち実に50%が,プロセサやメモリーなどに到達する前に消失する。サーバーはもっと効率的だが,失われた電力は熱となるので,これを冷却するという非効率が生じる。電源管理はユーザーの責任が大きい問題だ。ノートPCはバッテリ駆動なので,スリープモードなどの省電力機能がよく使われるが,デスクトップPCでは,ほとんどのユーザーが電源管理機能を使っていない。

 今回来日した目的の1つは,日本のグリーンIT推進協議会との提携である。これにより日本の地球温暖化対策が加速するだろう。日本企業とも対話を始めている。米国企業に比べると,効率化に対する意識が高いし,電力効率の高い製品の購入にも強い関心を示している。ただ,製品の供給側に注目すると,まだ我々のなすべき仕事があるように思う。

 2007年6月のCSCI設立当時,米環境保護庁(EPA)の省エネルギー基準「Energy Star」の最新版を満たすIT機器は限られていた。そこで日本の大手企業が「Energy Star 4.0に準拠した製品を供給してほしい」とコンピュータ・メーカーにリクエストを出したという。我々はこうした動きを推進し,支援していきたい。

 CSCIがいわゆる業界団体と最も異なる点は,構成メンバーがIT企業だけでなく,ユーザー企業や個人消費者も含まれている点だ。ユーザー企業や一般消費者向けには「アフィリエイト」という会員制度を用意している。アフィリエイト会員になると,CSCIが定める「環境負荷の低い」製品を購入し使う“約束”をすることになる。

 「会員になってもならなくても,新しい製品を採用すれば電力の効率化は自然と進むのではないか」と言われれば確かにその通りだ。しかし問題は,環境負荷が低い製品に20ドルを余計に払う気になるかどうかである。多少高くても,環境負荷の低い製品を選んでもらえる状況を作り,環境負荷の低減を加速することが,我々の仕事だ。