NTTドコモは夏モデル(関連記事)の発売に合わせて「ホームU」と「ポケットU」という2つのホームエリア向けのサービスを開始する。いずれも固定回線を活用するサービスであり,ドコモが本格的にFMCサービスに乗り出し,NTTグループとの連携を強化する方向へ舵を切ったことをうかがわせる。以下からは,夏モデルの発表会場で分かった2つのサービスの詳細について紹介する。

デュアル端末をコンシューマー向けにも展開した「ホームU」

写真1●ホームUに対応する「N906iL(onephone)」
写真1●ホームUに対応する「N906iL(onephone)」
従来機のN902iLはIEEE 802.11b/g対応だったが,11b/gに加えて新たに11aにも対応している。
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 ホームUは,FOMA/無線LANデュアル携帯電話「N906iL(onephone)」(写真1)を利用し,自宅からは無線LAN経由のIP電話(050番号)として,自宅外からはFOMA網経由の携帯電話(090/080番号)として発着信できるサービス。月額1029円の利用料を支払えば,自宅から無線LAN経由でiモードのパケット通信が無料になる。さらにホームUユーザー向けの通話が無料,ホームU以外への電話も通常の携帯電話発の場合と比べて3割ほど割安になる。

 同社は,同様のサービスとして法人向けの「ビジネスmoperaIPセントレックス」を提供中。ホームUは,それを一般ユーザー向けに応用したと言える。「大容量の動画を高速ダウンロードしたい要望などがユーザーから出始めていたので,このタイミングでサービスを企画した」(NTTドコモ)。ホームU対応端末であるN906iL(onephone)は,法人向けにも販売する。PASSAGE DUPLEやビジネスmoperaIPセントレックスなど,内線電話と携帯電話の融合サービスに対応する。

 ホームUでは,自宅に設置したホームU対応無線LANルーターの圏内に端末がいる場合は,携帯電話(090/080番号)のほかIP電話(050番号)での発信が可能になる。ただし,通話中に無線LAN圏内から離れた場合は,通話は切断される。FOMA網へシームレスに切り替わる機能は備えていない。また通話相手が050番号で着信可能な無線LAN圏内にいない場合は,050番号で発信すると相手にはつながらない。ユーザーは相手の状態によって,050番号と090/080番号を使い分ける必要がある。なお,公衆無線LANサービスには対応していない。

 法人向けのビジネスmoperaIPセントレックスでは,6月から090/080番号だけを利用して携帯網経由と固定網経由の着信を切り替えられる“ワン・ナンバー”サービスを開始する(関連記事)。「今後ニーズが出てきたら対応を検討するが,ホームUでは当初は“ワン・ナンバー”には対応しない」(NTTドコモ)。

 無線LANルーターを接続するブロードバンド回線は,マルチセッションに対応した回線が必要になる。マルチセッションに対応したブロードバンド回線は,事実上,NTT東西地域会社が提供するADSLやFTTHサービスに限られる。このため,ホームUはNTTグループの連携強化につながるとの議論を呼びそうだ。

 なお同社は将来的にホームUで利用する無線LANルーターの代わりに,超小型基地局であるフェムトセルを投入していく計画も明らかにしている。フェムトセルが使えれば,デュアル端末だけでなく,通常の携帯電話でもホームUが利用可能になる。同社の永田清人執行役員 プロダクト&サービス本部 プロダクト部長は「フェムトセルの投入時期は明らかにできないが,無線LANもフェムトセルも,自宅で高速通信が体感できる点は同じ。ドコモにとっては,どちらも屋外基地局のリソースを空けられるメリットがある。携帯端末の対応しやすさやフェムトセルのコストなどで,投入時期や方法を考えていきたい」と語った。

ネット家電との連携にも対応する「ポケットU」

写真2●ポケットUを使い,自宅パソコンのコンテンツを携帯電話で視聴しているところ
写真2●ポケットUを使い,自宅パソコンのコンテンツを携帯電話で視聴しているところ
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 自宅パソコンに保存した動画や音楽ファイルなどを携帯やパソコンを使って外出先から視聴できる「ポケットU」も,発表会場で実際のデモを披露した。

 ポケットUは,ブロードバンド回線を経由してパソコンとドコモのネットワークをVPN(仮想閉域網)接続しておくことで,携帯電話経由で自宅パソコンのフォルダに保存した動画や文書ファイルを閲覧できるサービス(写真2関連記事)。VPNはIPsecを利用しており,ブロードバンド回線はIPsecを利用できるタイプであれば制限はない。

写真3●ポケットUでのホームサーバーとの連携例
写真3●ポケットUでのホームサーバーとの連携例
家電機器をUPnPを使ってパソコンと接続し,パソコン上で動画ファイルを変換する形になる。
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 ただし,ポケットUを利用するには,ソフトをインストールしたパソコンを起動しておく必要がある。将来的には携帯電話から遠隔でパソコンを起動できるアプリケーションを提供予定だが,「パソコンとルーターの双方で動作可能な機器が限られる見込み」(NTTドコモ)という。

 ポケットUでは,将来的にはホームサーバーなどの家電機器との連携も可能にしていく予定。発表会場では一足先に,ソニーのホームサーバー「VAIO type X Living」と連携するデモを見せていた。ホームサーバーとポケットUのソフトをインストールしたパソコンをネットワークで接続し,ホームサーバー上のファイルをパソコンに転送する形になる(写真3)。その際にポケットUで閲覧できる形に動画ファイルを変換する。「ソフトウエアで再エンコードするので,変換には多少時間がかかる場合がある」(同)という。