NHK職員による株式のインサイダー取引問題の原因究明を行っていた「職員の株取引問題に関する第三者委員会」は2008年5月27日,調査報告書をまとめて福地茂雄会長に提出した。報告書では今回のインサイダー取引問題が発生した直接的な原因と,その背景になったNHKの組織上の問題点を挙げたうえで,10項目の提言を行った。

 第三者委員会は報告書で,インサイダー取引が同時多発的に発生した直接的な原因として,(1)当事者のプロ意識の欠如,(2)インサイダー取引に対するリスク管理がNHK内に存在しないこと,(3)報道情報システムの不備と運用規律の弛緩──という3点を指摘した。さらに組織上の問題点として,(1)職業倫理を確保する体制を欠いていた報道部門の弱体化,(2)新しいリスクへの対応の視点を欠いたコンプライアンス策による現場の疲弊,(3)統一的・包括的なセキュリティーシステムの不在──などの5点を挙げた。そのうえで今後の対策として10項目の提言を行った。主な提言項目は,以下の通りである。

・「プロのジャーナリスト,報道機関とは何か」,「公共放送の使命」の議論を組織内で活発に行う
・意識改革を目指すコンプライアンス策と研修を実施する
・コンプライアンス策を明確に位置付ける
・関連団体も含めて,懲戒制度の厳格かつ柔軟で実効性がある運用を確保する
・縦割り組織を改編・変革する
・ 報道情報システムにアクセスできる者,報道業務に携わる者は,株取引を全面的に禁止する
・ 職務に関連して知り得た情報の目的外利用の禁止,就業時間中の株取引の禁止