情報通信審議会の電気通信事業部会とユニバーサルサービス委員会は2008年5月27日,日本全国で誰もが低廉な電話サービスを利用できるようにするための「ユニバーサルサービス制度」について,関係者の意見を聴取する合同ヒアリングを開催した。

 ユニバーサルサービス制度は,地理的な条件によって採算のとれない山間部など一部地域の電話サービスを安定的に提供するため,NTT東西地域会社の赤字額の一部を基金の形で電話ユーザー全体で負担している仕組みである。2008年度は一つの電話番号に付き月額6.3円の「ユニバーサルサービス料」がユーザー料金に付加されている。

 しかし今後は,加入電話を代替するIP電話サービスや直収電話サービスに多くのユーザーが移行することによって,加入電話サービスの採算がますます悪化することが見えている。こうした中,今回の情通審の議論では,IP電話への移行期にどのようにユーザーの負担を抑制するかが主要なテーマとなっている。

テレサ協は不要なメタル回線の撤去を提案

 今回のヒアリングでは,NTT東西とNTTドコモ,イー・アクセス,ケイ・オプティコムの通信事業者5社と,テレコムサービス協会(テレサ協),全国消費者団体連絡会の2組織が意見を提出した。NTT東西は,不採算地域の電話サービスを維持するには,赤字補てんの発動基準を現行制度より下げることが不可欠だとした。

 一方で競合する事業者からは,利用者の負担を軽減するためには,NTT東西が加入電話サービスの提供コストを軽減する対策を打つことが必要だという意見が相次いだ。例えばテレサ協からは,NTT東西に義務付けられているメタル回線の提供義務を見直し,IP電話へ移行して使われなくなったメタル回線は一部撤去できるように法制度を見直すことで,加入電話網全体の維持コストを抑制できるようにすべき,とする具体策が提示された。

 これらの意見に対して部会や委員会の構成員からは,「より議論を深めるためには,NTT東西が加入電話網からIP網への移行をどう計画しているかが分かる資料が必要だ」とする声が相次いだ。IP電話に移行した部分のメタル回線を撤去することで,どれだけ加入電話網の維持コストが下がるのかの効果が分かれば,検討に値するとの見解である。

 また加入電話網を構成している交換機の寿命についても,NTT東西に検討状況を示すようにとの指示が出た。NTT東西は,交換機が維持できなくなった場合は,メタル回線を加入電話網からNGN網に収容替えすることも選択肢の一つとして提示している。これについてもNGN網への収容替えで,電話サービスの提供コストがどう変わるかの試算結果を示すようにと指示した。

 情通審は,関係者からのヒアリングを6月9日にも開催し,KDDI,ソフトバンクなどが意見を述べる予定。NTT東西には,次回ヒアリングの際に,今回の意見に対するある程度の回答を用意することが求められた。情通審は今回と次回の意見聴取の結果を基に議論を進め,今秋をメドに今後のユニバーサルサービス制度の在り方についての答申案を公表する予定である。

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■変更履歴
記事掲載当初,次回会合予定を「6月7日」と記載していましたが正しくは「6月9日」です。お詫びして訂正いたします。[2008/05/28 18:35]