写真1 「アドホック端末ペアリング技術」によるユーザー認証画面<br>パソコンと携帯電話の両方で,タイミングを合わせて「ペアリング実行」ボタンを押すだけである。
写真1 「アドホック端末ペアリング技術」によるユーザー認証画面<br>パソコンと携帯電話の両方で,タイミングを合わせて「ペアリング実行」ボタンを押すだけである。
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写真2 パソコンと携帯電話の画面に同じ画像が表示され,ペアリングが実施される&lt;br&gt;左がパソコン,右が携帯電話。両端末で違う画像が表示された場合は,ユーザー操作で同じものに合わせる。
写真2 パソコンと携帯電話の画面に同じ画像が表示され,ペアリングが実施される<br>左がパソコン,右が携帯電話。両端末で違う画像が表示された場合は,ユーザー操作で同じものに合わせる。
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 NECは2008年5月22日,携帯電話をパソコンやゲーム機,キオスク端末など他の情報端末と連携させるための「アドホック端末ペアリング技術」を開発したことを明らかにした。

 アドホック端末ペアリング技術とは,「携帯電話とその他の機器を連携させる際の認証手順を簡単にする」(高島洋典サービスプラットフォーム研究所長)ためのものである。携帯電話ユーザーによる簡単な操作で,携帯電話の通話のセッションに異なる端末のセッションをひも付けることができ,両者を連動させられる。

携帯とPCのボタンを同時クリックで認証完了

 例えば,携帯電話で通話している同じ企業の社員2人が,会話の途中でお互いの手元にあるパソコンを使って資料を共有できる。この場合はまず2人が,通話を切らずにパソコンのブラウザと携帯ブラウザの双方で,認証用Webページにアクセスする(写真1)。このページ上で,パソコンと携帯電話の両方同時に(2秒以内など)画面に表示された「ペアリング実行」ボタンをクリックする。両方の端末に同じ画像が表示されれば認証とペアリングが完了する(写真2)。複数の画像が表示された場合は,同じものに合わせる。その後パソコンで,ブラウザを使った情報共有を始められる。通話が終わると,情報共有のセッションも切断される。

 この仕組みは,SIPサーバーまたは電話交換機を含むペアリング用のサーバー群で実現している。また,携帯電話のデバイスIDとSIP URI/電話番号を対応付けて登録したデータベースが必要になる。

 動作原理は以下の通り。まず,「ユーザーが携帯電話で正しい相手と通話しているため,携帯電話のセッションは正しい端末につながっている」ことを前提にしている。通話しているユーザー同士が,携帯電話とパソコン両方で同時に「ペアリング実行」ボタンを押すと,ペアリング用のサーバーは携帯電話のデバイスIDとパソコンのIPアドレスを取得し,それをペアと認識する。つまり,携帯電話とパソコンのペアが2組できる。それぞれのペアで,携帯電話のデバイスIDが通話中のSIPアドレス/電話番号と同じ端末であることを確認して,それぞれのパソコンの間にセッションを確立して情報共有を開始する。

 この技術の特徴は,既存の携帯電話網を活用して,通話を他のコミュニケーション手段と連携させていること。「画面共有はインターネット経由だが,音声は電話網を利用するため安定した品質で使える」(竹田直博サービスプラットフォーム研究所研究部長)。携帯電話端末はブラウザを搭載していればよく汎用性が高い点もポイントだ。なおパソコン側では画面共有をするために,ブラウザにActiveXコントロールをインストールする必要がある。このActiveXコントールは画面共有を終了するときに,データをパソコンから消去する機能も持つ。

ゲーム機やキオスク端末との連携も

 NECではこの技術の活用法として,「出張先のホテルやテレワーク環境にいる社員と資料を共有する」,「コールセンターのオペレータが顧客に書類を見せながら説明する」などを挙げている。携帯電話のセッションをパソコン以外の端末と連携させる応用例もある。「ゲーム機と連携させて,ネットカフェから対戦ゲームに参加する」「キオスク端末と連携させて,携帯電話で予約したチケットをコンビニエンス・ストアで印刷する」などの使い方も考えられるという。

 NECでは,通信事業者への導入を目指して6月から営業活動を始める。また,6月11日から千葉県千葉市の幕張メッセで開催される「Interop Tokyo 2008」に出展する予定である。