米Microsoftが2008年5月第4週にもなって改めて米Yahoo!に関心を示したのは,Yahoo!がインターネット市場大手の米Googleと交渉しているからだろう。Yahoo!とGoogleの提携を阻止するため,MicrosoftはYahoo!検索事業の買収を提案したようだ。この取引が実現すれば,うまい具合にYahoo!を小さな二つの会社に分割できる。

 買収対象を検索事業に絞り込むことは,MicrosoftにとってYahoo!を丸ごと買うよりも有意義だし,そもそもYahoo!買収を提案した最大の理由であろう。両社の交渉に詳しい人物によると,Microsoftは検索事業を買収し,後に残る事業に小規模な投資を実施したがっているという。さらに,この取引の一環として,Yahoo!は日本の「Yahoo! Japan」と中国を拠点とするAlibaba Groupといったアジア事業を売却する。

 まだMicrosoftはYahoo!の検索事業を査定していないが,当初Yahoo!を一括購入しようとして提示した475億ドルと比べ,小さな数字ではないだろう。両社の検索事業が統合されれば,Googleにとって市場第2位の強力なライバルが登場する。検索市場における現在のシェアは,Googleが約60%,MicrosoftとYahoo!の合計が約30%だ。

 Microsoftが大方の予想に反してYahoo!との新たな提携交渉を始めたのは,億万長者の投資家Carl Icahn氏の財政工作がきっかけである。同氏はYahoo!の役員会に対し,Microsoftとの合併交渉を再開しなければ委任状争奪戦を仕掛けると脅したのだ(関連記事:投資家Icahn氏がYahoo!会長にMicrosoftとの合併を提言,委任状争奪戦へ)。Yahoo!は同氏の提案に反発したものの,週が明けたら案の定Microsoftとの話し合いを再開した(関連記事:Yahoo!,同社役員の退陣を求めるIcahn氏に対して「現役員は最適者」と反論)。

 詳細はどうあれ,Yahoo!の役員会が最も価値の高い財産である検索事業を手放すことに合意するとは考えにくい。これに対し,Microsoftの目先の目標は,Yahoo!がGoogleに提案している提携の実現を阻止することだけだ。Yahoo!とGoogleが合意に至れば,Yahoo!はオンライン広告事業の一部をGoogleに外部委託する。ただし,この取引は独占禁止法に触れる恐れがあるだけでなく,Yahoo!の持つ技術的価値を損なってしまう。

 より大局的に考えると,Microsoftが先日表明した,Yahoo!買収提案は「過去の話」という状況は,明らかに真実と異なる(関連記事:MSがYahoo!と提携を検討中,「買収の再提案はない」としながらも可能性は残す)。Microsoftの新たな計画は,当初の見立てよりずっと最初の買収計画に近いようだ。