写真1●Citrix Systemsの社長兼CEOであるMark Templeton氏
写真1●Citrix Systemsの社長兼CEOであるMark Templeton氏
[画像のクリックで拡大表示]
 米Citrix Systemsは5月19日(米国時間),デスクトップ仮想化ソフト「XenDesktop」の出荷を開始したと発表した。同社の年次カンファレンス「Citrix Synergy」で社長兼CEO(最高経営責任者)のMark Templeton氏(写真1)は「XenDesktopによって『Desktop as a Services(サービスとしてのデスクトップ環境)』が実現する」と強調した。同社は10ユーザーまでに対応する最小構成の「XenDesktop Express Edition」を無償で公開することも明らかにしている。

仮想化とシンクライアントを組み合わせ「どこでも利用でき,集中管理できる」

写真2●XenDesktopではHD(高精細)動画を使用したり,デスクトップ環境をサービスとしてエンドユーザーに提供したりできるようになるとアピール
写真2●XenDesktopではHD(高精細)動画を使用したり,デスクトップ環境をサービスとしてエンドユーザーに提供したりできるようになるとアピール
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●XenDesktopの製品構成
写真3●XenDesktopの製品構成
[画像のクリックで拡大表示]
 XenDesktopは,ハイパーバイザー・ベースの仮想化ソフト「Xen」上で「Windows Vista」を稼働させ,そのデスクトップ画面をシン・クライアントや他のWindows/Macintoshパソコンからネットワーク経由で利用するソリューションである。アプリケーション仮想化ソフト(ターミナル・サーバー・ソフト)である「XenApp(旧名称はCitrix Presentation Server,MetaFrame)」との違いは,デスクトップOSがユーザー毎に用意されている点である。

 デスクトップ仮想化を使用する利点についてCitrixの社長兼CEOであるTempleton氏はこう主張する。「仮想化されていない物理PCは,ハードウエアを用意して,OSの環境を設定し,修正パッチを適用し,アプリケーションをインストールして,アプリケーションのパッチも適用しなければ快適に使えない。それでいて3年も経てば,新しいハードウエアの調達が必要だ。デスクトップ仮想化を使用すれば,ネットワークさえあればどこからでもデスクトップ環境が利用できるし,パッチの適用やセキュリティ設定を集中管理できる。それでいて,デスクトップ環境全体が仮想化されているので,パーソナライズも可能だ」(Templeton氏)。

 XenDesktopでは,デスクトップ画面の転送に同社の「ICA」プロトコルを利用しており,仮想マシン上で再生したHD(高精細)動画も,ネットワーク経由で転送可能という(写真2)。また同社では,デスクトップ仮想化のXenDesktopと,アプリケーション仮想化のXenAppを組み合わせて使用すべきだと主張している。「OSとアプリケーションを分離することで,これらの集中管理が容易になる」(Templeton氏)がその理由だ。同社ではXenDesktopの上位エディションにXenAppをバンドルしているほか,既存のXenAppのユーザーに対してXenDesktopを割引販売することで,XenDesktopとXenAppの組み合わせ使用を広める考えだ。

 XenDesktopの製品構成(写真3)は,最大10ユーザーまで無償で使える「Express Edition」のほか,ユーザー数無制限の通常版「Standard Edition」(1ユーザー当たり75ドル),単一のOSイメージを使って複数台のデスクトップOSを仮想マシン上で実行できる「デスクトップ・プロビジョニング」機能が付属する「Advance Edition」(同195ドル),デスクトップ・プロビジョニングとXenAppが付属する「Enterprise Edition」(同295ドル),最上位版でユーザー・サポート機能が強化された「Platinum Edition」(同395ドル)がある。

「ハイパーバイザー型の性能劣化は小さい」とアピール

写真4●仮想サーバー「XenServer」でXenAppを使用する場合,物理サーバーと比較した場合の性能劣化が少ないとアピール
写真4●仮想サーバー「XenServer」でXenAppを使用する場合,物理サーバーと比較した場合の性能劣化が少ないとアピール
[画像のクリックで拡大表示]
 Templeton氏は基調講演で,ユーザー企業のデータ・センターは「アプリケーション・デリバリ・センター」であるべきだと主張した。Templeton氏は,「現在,新しいアプリケーションは皆,Webアプリケーションとしてリリースされている。Webアプリケーション配信の高速化ソリューションとしてわれわれは『NetScaler』を販売している。NetScalerは,米Amazonや米Yahoo!,米Apple,米IBMなどが使用しており,インターネット・ユーザーのほとんどがNetScalerに触れているのが実情だ。この技術は是非,企業アプリケーション配信でも使用すべきだ」と訴える。

 また,Windowsアプリケーションを仮想化して配信するXenAppに関しては,サーバー仮想化を使用する場合のパフォーマンス向上をアピールした。「(既存のホスト・ベースである)Virtual Server上でWindows Serverを稼働させて,そこでXenAppを使用した場合,物理サーバーと比較して性能(同時に利用できるセッション数)が40~60%劣化していた。しかし,ハイパーバイザー・ベースのXenServer上でWindows Serverを稼働させてXenAppを使用すると,8%しか性能が劣化しない(写真4)」(Templeton氏)と,同社が2007年に買収したXenのパフォーマンスを強調している。