日本版SOX法(J-SOX)対応後の企業経営を考える非営利団体であるAfter J-SOX研究会は2008年5月20日、「内部統制成熟度モデル(企業価値向上モデル)」を公表した。内部統制と連結経営の取り組みを企業価値の向上に生かす過程を5段階で表す。J-SOXへの対応は「レベル2」と位置付けている。

 内部統制成熟度モデルでは、内部統制の成熟度を(1)レベル1:最小限の内部統制、(2)レベル2:J-SOXベースの内部統制、(3)レベル3:包括的な内部統制、(4)レベル4:リージョナルERM(統合リスクマネジメント)、(5)レベル5:グローバルERM、の5段階で表す。

 レベル1はJ-SOX以前の、個社レベルでのガバナンスを確立した状態。レベル2はJ-SOXに基づいて財務報告にかかる内部統制を確立した状態。レベル3はJ-SOXに基づく内部統制に加えて、業務の有効性・効率性やコンプライアンス(法令順守)に関する内部統制を確立した状態を表す。この段階で、グループ全体の業務の標準化や共通化が実現できているとする。

 レベル4とレベル5は、内部統制への取り組みを発展させたERMを実践した状態である。レベル4では、レベル3の内部統制のレベルに加えて、企業戦略の実現にかかわるリスクマネジメントの体制を国ごとに整備する。レベル5は、レベル4の状態を世界レベルで整備することを表す。この段階になれば、グローバルな連結経営が実現可能になる。

 After J-SOX研究会の会長を務める、立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科の田尾啓一教授は、内部統制成熟度モデルについて「J-SOXに対する活動を最終的に企業価値の向上につなげるための羅針盤として役立ててほしい」と話す。「個人的な希望としては、3年から5年程度でレベル5を目指してほしい」(田尾教授)。

 After J-SOX研究会は、アビームコンサルティング、伊藤忠テクノソリューションズ、SAPジャパン、NEC、サン・マイクロシステムズ、新日鉄ソリューションズ、TIS、ディーバ、日本オラクル、日本ユニシス、日立コンサルティング、日立製作所、富士ゼロックスなどのベンダーが中心になり、07年11月に発足した(関連記事)。発足当初は26社・70人が参加していたが、現在は36社・106人が参加している。

 当初は活動期間を08年3月までとしていた。しかし「会員企業に『予定通り止めるべきか』とアンケートを取ったところ、延長を望む声が大多数だった」(同研究会運営委員を務めるアビームコンサルティングの永井孝一郎プリンシパル)ため、活動期間の1年延長を決めた。09年3月まで「成熟度モデルを具現化するソリューションに向けた体系化や情報の共有化を進めていく」(同)予定だ。