写真1:SHVの動画像を伝送するデモ
写真1:SHVの動画像を伝送するデモ
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写真2:SHVの放送に対応する映像・音声符号化装置
写真2:SHVの放送に対応する映像・音声符号化装置
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写真3:緊急警報放送に反応して自動起動する携帯端末
写真3:緊急警報放送に反応して自動起動する携帯端末
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 NHKは2008年5月20日に,放送技術研究所の研究成果を披露する技術展示会「技研公開」(5月22~25日に一般公開)の報道機関向けプレビューを開催した。今年の技研公開では,NHKが提案している新たなBSデジタル放送の放送方式の要素技術や,これらの方式を用いた新サービスを提供するために使うアプリケーションなどを展示する。

 具体的には,NHKが実用化を目指しているスーパーハイビジョン(SHV)の動画像を伝送するデモ(写真1)や,NHKがBSデジタル放送の周波数を使って行うことを想定している動画像の高速ダウンロードサービスなどを展示する。2011年7月以降のBSデジタル放送では,トランスポンダ(電波中継器)7本分の周波数帯域が新たに利用できるようになる。NHKはこれらの周波数を利用して,新たなサービスを開始することを目指している。

 SHV関連では,「映像/音声符号化装置」などを展示する(写真2)。SHVの映像を約118Mb/sに,音声を約2Mb/sの容量にそれぞれ圧縮し,126Mb/sの「MPEG-2 TS」方式の信号として出力する装置である。高度BSデジタル放送の暫定規格で伝送可能なビットレートだ。映像の圧縮方式には「H.264」方式を,音声の圧縮方式には「AAC」方式を採用しており,符号化および複合化はハードウエアでリアルタイムに実施する。

 このほかSHVの新たな符号化方式としてNHKは,映像符号化システムを英BBCの技術研究所と共同で研究を進めている。BBCが開発した映像符号化方式「Dirac」を採用している点が特徴だ。Diracは,「wavelet変換」(信号を高周波成分と低周波成分に分解して解析する手法)と動き補償の技術を用いた映像符号化方式である。技研公開では,Diracに対応するシステムのソフトウエアで符号化したSHVの動画像を展示する。

 さらに緊急警報放送に反応して自動的に起動する携帯端末(写真3)や,時速300km程度で高速移動しているときでも地上デジタル放送(ハイビジョン放送)を安定して受信できる装置,特殊な眼鏡を使用しなくても立体像を見ることができるインテグラル式の立体テレビなども展示する。