米Yahoo!は,同社役員の退陣を求めている投資家Carl Icahn氏に対する書簡を米国時間2008年5月15日に公開した。同社会長のRoy Bostock氏は書簡の中で,同社CEOのJerry Yang氏を含む役員10人は全株主の価値を最大限に引き上げる最高の適任者であるとして,現役員を留任する方針を示した。

 Icahn氏は同日,Bostock氏宛てに,米Microsoftとの合併を再検討するよう促す公開書簡を送っていた。Microsoftが示した1株当たり33ドルという買い取り価格は破格な提案であり,株主にこの条件を受け入れさせなかったYahoo!役員会は非良心的だと非難。10日間かけて約5900万株を取得し,Yahoo!の現職役員を退陣させてMicrosoftとの合併に賛成する役員と入れ替えるため,委任状争奪戦を仕掛ける意向を正式に示した。(関連記事:投資家Icahn氏がYahoo!会長にMicrosoftとの合併を提言,委任状争奪戦へ)。

 これを受けBostock氏は,Icahn氏が挙げた役員候補10人は,「かつてYahoo!買収に関心を示していたが,今ではそれを撤回した企業にYahoo!を押し売りすることを目的にしている」と指摘し,同氏を含む役員候補に経営を委ねることは,株主にとって最大の利益になるとは思えないと返答した。

 また,現在,いずれの企業からも同社に対する買収提案が無いことを前置いた上で,「今でも,Microsoftを含むいずれの組織であろうと,株主にとって利益になる申し出があれば検討する姿勢であることは明々白々である」と説明した。

 Microsoftの当初の提示額は1株当たり31ドル(総額は446億ドル)で,これは,1月31日のYahoo!の株価に62%のプレミアム(上乗せ)を加えた額だった。結局5月の第1週目,Microsoftは提示額を33ドルに引き上げ,先の総額に50億ドル上乗せする用意があることをYahoo!に告げた。しかしYahoo!が1株あたり37ドルという価格に固執したため交渉は折り合わず,Microsoftは5月3日に正式に買収案撤回を発表した。

 Yahoo!の株価は,Microsoftが最初に買収提案を公表した際に急騰し,以降,ほぼその水準を保ったまま推移してきた。しかしMicrosoftの撤退発表を受けて,15%下落し24.47ドルまで下げた。今回の買収交渉決裂に不満を持つ株主は多く,Icahn氏を支持する株主も多数いるのではないかと報じられている(関連記事:それぞれの道を選んだかに見えたYahoo!とMS,買収劇に新章の予感)。

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