写真1●新戦略を発表するNTT・三浦惺社長
写真1●新戦略を発表するNTT・三浦惺社長
[画像のクリックで拡大表示]

 NTT持ち株会社の三浦惺社長は,2008年5月13日に開いた07年度決算説明会で,2008年度から2012年度までの5年間の経営目標を示した新しい戦略「サービス創造グループを目指して」を発表した。NGNを中心とした新しいサービス展開によって,光サービスの需要喚起と収益改善を目指すものである。

 同社は2004年11月に発表した中期経営戦略「2010年度に光ユーザー3000万件」の目標を2007年11月に2000万件に下方修正している。これを受けて今回は,新たなグループの中期経営戦略との位置づけで新戦略を発表した(写真1)。

2012年度末にNGNへの移行を完了

 新戦略では,光ユーザー2000万件達成の節目となる2010年度に,固定通信と移動通信の双方のネットワークをフルIP化し,サービス融合の基盤を確立する。そのうえで2012年度までに「ブロードバンド・ユビキタスサービス」を本格展開し,新たな収益基盤を確立する計画だ。

 具体的には,まず固定系では2012年度末までに既存の地域IP網から次世代ネットワーク「NGN」への移行を完了させる。全国規模でNGNが整備される2010年度から,既存の地域IP網ユーザーをNGNへと収容替えしていく計画だ。

 2010年度時点では,合計2000万件に達する光ユーザーのうち約半数をNGNに収容すると見通す。さらにその後,NGNを中心にIP系サービスの高度化・多様化による増収と,ユーザー拡大による設備稼働率の向上によりコストを低減し,2011年度にNGN,地域IP網,光アクセス回線を併せた「光サービス事業」全体で単年度黒字化を達成する計画である。

IP系を中核に2012年度に営業益1.3兆円

 このような移行施策と並行して,事業構造も大きく変革する。連結売上高では,2007年度時点で全体の約52%にとどまるIP系事業とソリューション事業の売上高を,2012年度までにIP系40%,ソリューション35%で,合計75%までに引き上げる。電話の音声収入や従来の専用線収入の減少を見越して,新たな収益基盤を確立する計画だ。

 財務指標としては,従来の中期経営戦略で示した「2010年度の連結営業利益1.2兆円」に加えて,2012年度には1.3兆円まで引き上げるとした。そのための施策として,IP系事業では,外部のパートナ企業と協力してIP電話,映像配信に次ぐ上位レイヤー・サービスを拡大する。

 またソリューション事業や新事業分野では,外部企業のM&A(合併・統合)も視野に収益拡大策,不動産やエネルギー分野でも新ビジネスを広げる計画だ。

[発表資料へ]