写真1●ICタグ・リーダー(左)と専用バケット
写真1●ICタグ・リーダー(左)と専用バケット
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写真2●専用に開発したICタグと、それをバケットに取り付けるためのカートリッジ
写真2●専用に開発したICタグと、それをバケットに取り付けるためのカートリッジ
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 日本通運グループの日通商事は、自動車関連部品メーカーの東洋電装と共同で、日本・中国間の国際物流において、UHF帯無線ICタグを利用する実証実験に成功した。ホンダなどに自動車関連部品を納める東洋電装が発注した部品を、同社の上海工場に輸出する業務にICタグを適用した。東洋電装の再利用型専用バケットに国際標準「Gen 2」対応のICタグを取り付け、日本での出荷時や中国での入荷時などに読み取った。「中国工場での在庫削減などに効果を見出せそうだ」(日通商事ロジスティクス・サポート事業部事業部長付SATTプロジェクトRFIDチームリーダーの高野孝之氏)という。

■変更履歴
本記事の初出時に高野孝之氏の肩書きが誤っておりました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/5/15 21:50]

 日通商事は、東洋電装の納入業者が納める部品を日本で受け取って梱(こん)包し、中国に輸出する業務を請け負っている。2006年2月に日通商事の物流センター内でICタグを適用。それまで目視で実施していた検品作業などの精度を上げ、効率化した。読み取り回数はすでに19万回を超えている。それを今回の実証実験では、東洋電装の上海工場にまで広げた。上海工場での入荷検品を効率化したり、工場内での在庫を可視化したりする狙いである。

 上海工場では、在庫の可視化が十分ではない面があるという。部品を一時的に在庫する「入庫区」と、製造ラインに部品を投入する「工務区」間で移動する部品を確実に追えておらず、システム上の在庫と実在庫が一致しない状況が発生していた。専用バケットにICタグを付ければ、入庫区と工務区間にゲート型ICタグ・リーダーを設置するなどして、在庫数を正確に把握できるようになる。棚卸し作業もハンディ型リーダーなどを使って効率化できる。

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本記事の初出時に一部誤った表現がありました。本文は修正済みです。 [2008/5/15 21:50]

 ほかに、専用バケット自体の在庫も正確に把握できるようになる。バケットが紛失して追加発注するコストも減らせる見込みだ。

 実証実験は08年2月に実施。ケースに入れてフォークリフトで1度に運ぶ24個のバケットを一括読み取りできるかどうかを確かめた。日本と中国の各国の電波法に準拠したリーダー(米エイリアン・テクノロジ製)をそれぞれ導入し、24個のバケットを問題なく読み取れることを確かめた(写真1)。中国では、フォークリフトのドライバにICタグのことは説明せず、いつも通りに作業してもらった。それでも「問題なく100%読み取れた」(高野チームリーダー)という。

 ICタグは14ケース、336個のバケットに張り付けて実験した。長期間の再利用に耐えられるように、ICタグはインレットをPETフィルムで保護したものを専用に開発した(写真2)。そのICタグをバケットに固定するためのカートリッジも、物流機器大手の三甲と共同開発した。

 今回の実験の結果を基に、実導入への検討を始める。東洋電装以外のユーザーへの横展開も進めたい考えだ。