5月8日に開催された私的録音録画小委員会。「iPodに補償金適用へ」との事前報道もあり、議場には普段よりはるかに多い傍聴者が詰めかけた
5月8日に開催された私的録音録画小委員会。「iPodに補償金適用へ」との事前報道もあり、議場には普段よりはるかに多い傍聴者が詰めかけた
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 文化庁長官の諮問機関で私的録音録画補償制度について話し合う、文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会の2008年度第2回会合が、5月8日に開催された。この中で文化庁は、私的録音録画補償金は将来的に縮小・廃止する方向を示した。その一方で、音楽CDと無料デジタル放送の2分野では、当面の暫定策として補償金を存続させることを提案。補償金の対象機器・媒体については、「iPod」をはじめとする携帯音楽プレーヤー、Blu-ray Discレコーダー、HDD内蔵の録画機能付きテレビ受像機などを補償金の対象機器として追加することを提案した。

 補償金をめぐっては、権利者側が対象機器の拡大を主張する一方、メーカー側とユーザー側は著作権保護技術(DRM)と契約をベースに、複製回数に応じた課金に移行することを主張。現行の補償金制度は廃止すべきと主張しており、双方の意見が対立したままとなっている。また、6月2日に開始予定となっている、地上デジタル放送の「ダビング10」をめぐり、権利者側は補償金制度の維持を前提条件として掲げており、予定通りのスケジュールで実施にこぎつけるか否かの瀬戸際となっている。

 この日の議論では、メーカー側とユーザー側の委員から反対意見が相次いだ。最終合意が実現するかどうか、引き続きギリギリの調整が続きそうだ。

ダビング10は「権利者が回数に同意していない」

 同小委員会の事務局である文化庁 長官官房 著作権課は1月17日の会合で、「権利者の要請による著作権保護技術(DRM)」が設けられた利用形態において、私的録音録画補償金を順次廃止していくことを提案していた。

 今回の会合では、「権利者の要請によるDRM」の趣旨について、「コンテンツホルダーである権利者がDRMの導入前に、当該技術の開発や採用の決定に関与したかどうかが要素になる」と説明した。「個々の企業が個別の事業モデルとして導入するDRMはともかく、業界ルールとしてDRMを策定する際に、権利者の関与がないまま勝手にDRMが決まることはないはず」(文化庁 長官官房 著作権課 著作物流通推進室 室長の川瀬真氏)として、業界ルールとしてDRMを採用するようなケースでは一般に権利者の要請が成立するとの認識を示した。

 また、過去に策定されたDRMについて、(1)録音録画がDRMによって厳しく制限される場合(2)個々の権利者が著作物棟を提供する際に、厳しい制限を含むいくつかの選択肢の中から自由に選択できる場合(3)DRMと契約の組み合わせにより、利用者の便を損なうことなく個別徴収が可能な場合――のいずれかの要件を満たすDRMならば、私的録音録画に伴う権利者への補償は不要と位置付けている。

 その上でダビング10については、「情報通信審議会の審議において、権利者側はCOG(copy one generation)に加えて一定の制限を設けるという考え方は支持しているものの、特にその回数については、権利者の要請により策定されたものといえないことは明らかである」として、「権利者の要請に基づくDRM」の要件を満たさないとの認識を示した。現行のコピーワンスについては、「録音録画がDRMにより厳しく制限される場合」に該当するため補償は不要との見解を示した。