写真1●独SAPのレオ・アポテカー共同CEO
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写真2●米ハーレーダビッドソンのジム・ヘイニーCIO
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写真3●米コカコーラのエサット・セザーCIO
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写真4●米プロクター・アンド・ギャンブルのフィリッポ・パッセリーニCIO
写真4●米プロクター・アンド・ギャンブルのフィリッポ・パッセリーニCIO
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 「競争優位を獲得するには、異なる企業をまたがるビジネス・プロセス・ネットワークが欠かせない」。独SAPが5月5日~7日(現地時間)に開催した年次カンファレンス「SAPPHIRE 08 Orlando」の基調講演で、同社の共同CEO(最高経営責任者)を務めるレオ・アポテカー氏はこう断言した(写真1)。アポテカー氏は今年4月に独SAPの共同CEOに就任。09年には、共同CEOを務めるヘニング・カガーマン氏に代わって単独でCEOに就任する。

 なぜビジネス・プロセス・ネットワークが重要なのか。アポテカー氏は「1社内を効率化するだけでは、もはや他社にすぐ追いつかれてしまうから」と説明する。基調講演では、実際にビジネス・プロセス・ネットワークを構築した企業として米ハーレーダビッドソン、米コカコーラ、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のCIO(最高経営責任者)が登壇。各社の取り組みを説明した。

全世界で同じ経験を共有する

 ハーレーダビッドソンは07年にSAPのCRM(顧客情報管理)ソフトを導入。コミュニティなどを作り、顧客のネットワーク化を強化した。同社のジム・ヘイニーCIOはCRMソフト導入の目的を「当社のブランドを維持するため」と話す(写真2)。「当社のバイクの購入を夢見る顧客が、実際にオーナーになるまでのライフタイム・サイクル全体をサポートする」(ヘイニーCIO)ことで、ブランド価値の維持向上を目指す。そのためには「世界全体の顧客が同じ経験をできること」(同)が欠かせないと判断した。

 全世界で顧客に同じ経験を提供するために、同社は1カ月前からCRMソフトを全世界に展開中だ。日本でも09年に導入を予定している。「顧客を中心に、全世界を結ぶビジネス・ネットワークが当社に競争優位性をもたらす」とヘイニーCIOは話す。

 ハーレーダビッドソンはSAPの会計ソフトも導入。CRMソフトと連携して情報を一元管理できるようにした。「営業担当者がキーボードに向かっている時間よりも、顧客と接している時間を増やすことを目指している。社内の効率が上がれば、製品の価格が下がる。結果として、顧客のロイヤルティが向上するというサイクルを作りたい」とヘイニーCIOは語った。

サプライチェーンやグローバル企業のネットワーク化も推進

 配送網のネットワーク化を強化したのがコカコーラだ。同社はSAP製品の最大手利用企業の1社として世界的に有名。米シスコシステムズのVoIPソフトとSAPのSCM(サプライチェーン管理)ソフトを連携させ、音声入力のみで注文からピッキング、配送までの作業を実施するシステムを構築した。コカコーラのエサット・セザーCIOは「複雑な操作をせずに情報を入力できるようにしたことで、サプライチェーン全体の効率が向上。配送の精度が75%から99.8%に向上した」と効果を説明する(写真3)。

 音声入力を実現するアプリケーションはSOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方を取り入れ、2カ月で構築。VoIPソフトとSCMソフトの連携をコンポジット(複合)アプリケーションの形で実現したという。セザーCIOは「SOAは十分に実現できることを証明した。今すぐにでも企業が取り入れるべき考え方だ」と強調した。

 P&Gは全世界の支社をネットワーク化した。全世界で300以上のブランドを持つ同社は、SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージなどを利用して構築したシステムを160カ国以上に展開している。同時に「業務プロセスを可能な限りシンプルにし、共通化することを目指している」(フィリッポ・パッセリーニCIO)という(写真4)。

 同社がSAP製品の導入を開始したのは1990年代半ば。その間の業務の標準化や全世界への展開の効果を「顧客満足度に換算すれば6億ドルに相当する」(パッセリーニCIO)とみる。加えて「世界中のP&Gのプロセスを共通することで、M&A(合併と買収)や提携などのコラボレーションをしやすくなった」と説明する。