写真1●Microsoftでサーバー製品群を統括するSenior Vice PresidentであるBob Muglia氏
写真1●Microsoftでサーバー製品群を統括するSenior Vice PresidentであるBob Muglia氏 [画像のクリックで拡大表示]

 米Microsoftは2008年4月29日(米国時間),同社のシステム管理製品群「System Center」を異機種混在環境に対応させると発表した。ラスベガスで開催中の「Microsoft Management Summit 2008」の基調講演で,同社のBob Mugila氏が明らかにした。仮想化環境管理ソフトではHyper-VとESX Serverが同時に管理可能になるほか,構成管理ソフトもWindowsに加えてLinux,Solaris,HP-UXなどに対応する。発表と共に,これらの機能のベータ版も公開している。

 Microsoftの「System Center」はこれまで,「Windows環境に特化した管理ツール」という位置づけだった。対応しているOSはほぼWindowsに限られ,Windowsで動作するアプリケーションだけが統合管理可能だった。そのため従来は,「Windows環境はSystem Centerで管理し,異機種混在環境は米Quest Softwareや米CAといったサード・パーティ製品で管理する」という棲み分けができていた。

 しかし今回Microsoftは,システム管理製品群の異機種混在環境対応に踏み切った。Microsoftでサーバー製品群を統括するSenior Vice PresidentであるBob Muglia氏(写真1)はMicrosoft Management Summitの基調講演で「われわれは,Windows Serverが優れていると考えており,Windows以外の製品を使うことを勧めているわけではない。とはいえ顧客のデータセンターは異機種混在環境が当たり前であり,この環境を管理できる製品をリリースする必要があると顧客のフィードバックから学んだ」と,顧客の声を聞いた結果であるとアピールした。

PowerShellによる管理を異機種混在環境に提供する

写真2●Virtual Machine Managerで,Hyper-VだけでなくESX Serverも管理している画面
写真2●Virtual Machine Managerで,Hyper-VだけでなくESX Serverも管理している画面 [画像のクリックで拡大表示]

 仮想化環境管理ソフトの新バージョン「System Center Virtual Machine Manager 2008」では,Windows Server 2008の標準仮想化技術である「Hyper-V」だけでなく,競合である米VMwareの仮想化技術「ESX Server」も管理可能にする。

 Virtual Machine Managerは,仮想マシンの動作を管理したり,仮想マシンに対してOSやアプリケーションがインストールされたハードディスクのイメージ・ファイルをネットワーク経由で配布したりするツールである。現行バージョンの「Virtual Machine Manager 2007」は,既存のMicrosoft製仮想サーバーである「Virtual Server 2005」のみに対応するが,次期バージョンの「Virtual Machine Manager 2008」では,Windows Server 2008のHyper-Vだけでなく,VMwareのESX Serverにも対応する(写真2)。

 Muglia氏は,「2008年夏にリリースする予定のHyper-Vは,最新のハイパーバイザー型仮想化技術であり,われわれのベンチマークではESX Serverに匹敵する性能が実現している。われわれの強みはそれだけではない。Virtual Machine Manager 2008を使うと,Hyper-VとESX Serverの両方を管理可能だ。Virtual Machine ManagerでESX Serverを管理するメリットは,『PowerShellを使ったスクリプト』など,VMwareの管理コンソールには無い管理機能があることだ」と,VMwareへの対抗心をあらわにした。Virtual Machine Manager 2008には他にも,ESX Serverの仮想マシン上で動作するサーバーを,Hyper-Vに移行するウィザード・ベースのツール「Quick Migration」も搭載されている。

 なおMicrosoftは米Citrix Systemsと協力して,Hyper-VとCitrixのハイパーバイザー型仮想化技術「Xen」を相互運用できるようにすると発表している。Hyper-VとESX Serverとの間でできることは,Xenとの間でもできるようになると予想される。

 Hyper-Vは現在,製品候補版(RC)が一般に公開されている。製品版がリリースされるのは2008年夏の予定だが「既に,『MSDN』(同社の開発者向け情報,ソフトウエア提供サービス)と『TechNet』(システム管理者向けの情報,ソフトウエア提供サービス)という巨大なWebサーバーが既に,Hyper-Vで運用する仮想マシン上で稼働している」(Muglia氏)と,Hyper-Vが十分な実力を備えていることをアピールした。

LinuxやSolaris,HP-UXも統合管理

写真3●LinuxやSolaris,HP-UXも管理可能になる
写真3●LinuxやSolaris,HP-UXも管理可能になる [画像のクリックで拡大表示]
写真4●MySQLやApacheの運用状況も管理できる
写真4●MySQLやApacheの運用状況も管理できる [画像のクリックで拡大表示]
写真5●物理マシンは白色のアイコンで,仮想マシンは水色のアイコンで識別される
写真5●物理マシンは白色のアイコンで,仮想マシンは水色のアイコンで識別される [画像のクリックで拡大表示]

 また,複数サーバーのパフォーマンスや状態,発生したイベントなどを統合管理する「System Center Operations Manager 2007」に関しても,「Cross-Platform Extensions」という追加コンポーネントによって,従来のWindowsだけでなく,Linux(SUSEとRedHat),Solaris,HP-UXも管理できるようにする(写真3)。29日にはCross-Platform Extensionsのベータ版を公表しており,正式版は年内にもリリースする予定だ。

 Windows以外のOSを管理するためには,対象となるサーバーにOperations Managerのエージェント・ソフトをインストールする必要がある。ただし「使用するプロトコルは,WS-ManagementやSSHのような業界標準技術だ。また『OpenPegasus』のようなオープン・ソースの運用管理ツールとも連携できるようにする」(Muglia氏)とアピールしている。

 Cross-Platform Extensionsを組み込んだOperations Managerは,LinuxやSolaris,HP-UXといったOSだけでなく,それらのOS上で稼働する「MySQL」や「Apache」なども管理可能になる。Microsoft Management Summitの基調講演では,実際にデモも行っている(写真4)。

 なお,Virtual Machine Manager 2008を使用していると,Operations Managerの画面では,仮想マシンと物理マシンを統合的に管理可能になる。写真5は,Operations Managerの管理画面だが,物理マシンは白色のサーバー・アイコンで,仮想マシンは水色のサーバー・アイコンで示されている。