日本AMDがイベントで公開したスライド。AMD OverDriveのウインドウ上にあるボタンを黄色か赤にして、エラッタ修正コードを無効にする
日本AMDがイベントで公開したスライド。AMD OverDriveのウインドウ上にあるボタンを黄色か赤にして、エラッタ修正コードを無効にする
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 日本AMDは2008年4月26日、東京・秋葉原で開催した販促イベントで、Windows VistaのService Pack 1で起こる同社製CPUの速度低下についてコメントした。

 「B2 Stepping」と呼ばれる、2007年9月に発表したサーバー向けの「クアッドコアOpteron」と同11月に発売したデスクトップPC向けクアッドコアCPU「Phenom 9000シリーズ」には、特定条件下でキャッシュ周りの情報に不整合が生じる不具合(エラッタ)がある。マザーボードメーカー各社は、このエラッタを修正するためのコードを含んだBIOSを提供しており、デスクトップPC向けの多くのマザーボードではBIOS設定画面で修正を適用するか否かが選べるようになっていた。

 ただ、エラッタの修正コードを適用すると、メモリーアクセスの速度が低下することがある。日経WinPCの検証では、メモリー転送速度を測るテストで2割ほど、アプリケーションレベルのベンチマークでも5~10%の性能低下が起こった。この点について日本AMDの担当者は「一般的なクライアントPCの用途だとエラッタによる問題が発生する確率は低い。自作PCなどでは修正コードを適用しなくても問題ない」としていた。

 イベントでの日本AMDの解説によると、B2 SteppingのCPU(Phenom 9500/9600/9600 Black Edition、同X3 8400/8600、同X4 9100e)を搭載したPCにWindows Vista Service Pack 1をインストールすると、エラッタの修正コードが自動的に適用されるという。「クライアントPCでは修正は不可欠ではないが、どういう使われ方をされるか分からないためService Pack 1では修正を有効にしている」(日本AMD PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング部の土居憲太郎氏)。

 日経WinPCは、Phenom 9600を搭載したPCにWindows Vista Service Pack 1を適用すると、適用前に比べていくつかのベンチマークテストで性能が落ちることを確認している。修正コードが適用されるのはB2 SteppingのCPUのシステムだけで、エラッタが解消されたB3 SteppingのCPU(Phenom X4 9550/9650/9750/9850 Black Edition、同X3 8450/8650/8750)を搭載したPCでは適用されない。

 要は、B2 SteppingのPhenomだとWindows Vista Service Pack 1で遅くなるわけだ。これを回避するには、AMDが配布している情報表示/設定変更ユーティリティーの「AMD OverDrive」を使う。AMD OverDriveをインストールして実行し、ウインドウの右上にあるボタンを押して黄色か赤にする。

 標準の緑色だと、エラッタの修正は有効のまま。黄色だとBIOSで修正を有効にしたり、Service Pack 1をインストールしていても、エラッタの修正が無効になるため本来の処理性能になる。さらに赤色だと修正を無効にするほか、CPUの動作周波数を常時最高値に保つ機能が有効になるという。ただし「無効にするのは自己責任で試してほしい」(AMDの土居氏)という。