写真1●デンソーの小林公英氏
写真1●デンソーの小林公英氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●デンソーの吉井宏明氏
写真2●デンソーの吉井宏明氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「2005年から取り組んできだサーバーとストレージの仮想化プロジェクト。コスト削減の効果は大きく,サーバーが20%,ストレージは41%に上った」――。4月25日,都内で開催された「仮想化フォーラム2008」。壇上に立ったデンソーの小林公英氏(IT企画部 主幹 兼 デンソーアイセム ITサービス部 部長)は,仮想化の導入効果をこう報告した(写真1)。

 同社が仮想化に取り組んだ理由は明確である。2000年を過ぎたころから同社のシステムは,異機種のサーバーが混在し,大規模かつ複雑になっていたためだ。小林氏は「2004年までの3年間で,コストは3倍,トラブル件数は2.7倍に膨らんでいた」と振り返る。新規開発や保守などにも,迅速に対応できない状況だった。「サーバーも老朽化しサポート切れも間近。低コスト,高品質,短納期を実現するITインフラを目指して“仮想化”に命運をかけた」(同)。

リソース配分を四つにパターン化

 サーバーの仮想化では,97台のWindowsサーバーをブレード・サーバー33台に集約し,旧サーバー群のシステムを移行した。仮想化ソフトにはヴイエムウェアの「VMWare ESX Server」を採用し,その上で97台の仮想OSが動作する。

 「問題だったのは,移行すべきミドルウエアがVMware上での動作を保証していなかったこと」と,サーバー仮想化プロジェクトのリーダーを務めたデンソーの吉井宏明氏(IT企画部 標準化推進室)は打ち明ける(写真2)。そのためヴイエムウェアと協力して,実機による検証を繰り返した。

 サーバーを効率よく統合するために,仮想OSごとのリソース配分にも気を配ったという。旧サーバー上で動作する各システムのサービス時間やリソース使用率などを詳細に調査し,動作に必要なCPUやメモリーの配分レベルを「L」「M」「S」「SS」の4段階に分類した。

 例えばLサイズのシステムにはCPUを6.0GHz,メモリーを4Gバイト,MサイズならCPUを3.0GHz,メモリーを2Gバイト割り当てる,といった具合である。「調査の結果,全体の8割のサーバーが,SとSSサイズのリソースで十分なことが分かった。この結果を基にリソース配分を調整してサーバーを統合し,集約度を高めた」(吉井氏)。

ストレージ仮想化はILMの実践目指す

 一方,ストレージの仮想化では,「ILM(Information Lifecycle Management)を実現することを目指した」(小林氏)。ILMとは,時間とともに変化する情報の価値に応じて,データを最適なストレージに保存するという考え方。「それまでハイエンドのストレージに何でもかんでも格納していた。だがよく調べると,半年間アクセスしていないデータが全体の6割を占めていた」と吉井氏。ストレージのコストを膨らませる大きな要因の一つだったという。

 そこで吉井氏らは,97台のサーバー上で動作するすべてのシステムで,要求される可用性や性能を洗い出した。業務の特性ごとに,ミッドレンジやローエンドのストレージでも対応可能かどうかを一つずつ判断したのである。「予想通り,多くのシステムでハイエンドのストレージは必要なかった」(吉井氏)。

 デンソーは,従来のハイエンド・モデルに加えて,ミッドレンジとローエンドのストレージを新たに導入。それらをストレージ仮想化機能を使って一つのストレージ・プールとし,各アプリケーションに適したストレージ領域を割り当てた。その結果,1Gバイト当たりのコストを41%削減できたという。吉井氏は「仮想化機能を使ってストレージを使い分けるだけで,大きなコスト・メリットがあった」とその効果を強調した。