米ヤフーは2008年4月24日(米国時間)、米国サンフランシスコで開催中の「Web 2.0 Expo」で「Y!OS」と呼ぶ新たなプラットフォーム戦略を発表した。OSとはオープン戦略(Open Strategy)の略。ポイントはヤフーのさまざまなサービスを開発者に公開して、対応アプリケーションの充実や利用者の増加、それによる広告収入増を図ることだ。Y!OSという名称には同時に、ヤフー自身をプラットフォームとして広く利用してもらい、インターネット時代のOS(オペレーティング・システム)になりたいという狙いも込められている。
「ヤフーのオープン化戦略は単にフロントページの自由度を高めるだけにとどまらない。ヤフーのサービス全体を再接続してアプリケーション開発のプラットフォームとして公開するとともに、利用者が集う場としてヤフー自身をより『ソーシャル』な存在にする」。同社のアリ・バローCTO(最高技術責任者、写真1)は、Y!OSの意義をこう説明した。
バローCTOが披露したY!OSの構成要素は、まずアプリケーション実行の基盤技術群である「アプリケーション・プラットフォーム」だ(写真2)。開発者が投稿したアプリケーションをヤフーのデータセンターでホスティングし実行する「App Engine」、アプリケーションの構成管理やデータ管理用の各種データベース、アプリケーションを公開するギャラリーなどから成る。ヤフーは各機能を利用するためのAPIを公開した。
もう一つの主要な構成要素が、ユーザー情報の管理や連携を司る「ユーザー&ソーシャル・プラットフォーム」。ネット上での行動や交友関係、頻繁に利用するアプリケーションや参照するWebサイトといったプロファイルを基に、ユーザー同士がより容易に“つながれる”ようにするための機能群である。
ユーザーの現在の状態を伝えるプレゼンス機能、他のユーザーをコミュニティなどに招待する機能、自分などを中心にしたネット上の交友関係情報を管理するソーシャル・グラフ機能などを提供する。アプリケーションやユーザー情報の連携には、グーグルが主導して開発・公開した技術仕様「OpenSocial」を利用する。
バローCTOは、Webメール・サービス「Yahoo! Mail」をユーザー連携のハブにする実装例も紹介した。ソーシャル・グラフを基に地図サービスやチャットなどを連携させたり、自分が注目している情報を友人に知らせたりできる(写真3)。
「マイスペース」や「フェースブック」といったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、ユーザー同士のつながりを促す機能やサービスを次々に打ち出して支持を集め、利用者数を急拡大している。これを受けてヤフーも「オープンなAPIを使い一貫した方法で、ユーザーの各種プロパティを連携させる。新たなソーシャル・ネットワークを作るのではなく、ヤフーが提供している体験(アプリケーション、サービス)全体をつなぎ直し、ソーシャルなものに変えていく」(バローCTO)。ヤフーはアプリケーション開発環境も併せて公開した。
「ネット世界のOS」を目指す
ヤフーは、Y!OSに基づいて開発したAPI群「Search Monkey」を試験公開した。これは,一般の開発者がヤフーの検索機能を基に独自の検索サービスを開発できるようにするもの。ヤフーの検索サービスを使った検索結果に対して、写真など独自のデータを付加できる。「Search Monkeyは我々のオープンプラットフォーム戦略の第一歩だ」(バローCTO)。
折しも同社は米マイクロソフトから買収の提案を受けて、対応に苦慮している最中。4月26日には、マイクロソフトがヤフー経営陣の交代を求める委任状争奪戦を仕掛けるとしている期限を迎える(関連記事)。「OS」という名称を付けた新戦略を打ち出したことは、ネット世界のプラットフォームとなって自前で生き残るというヤフーの意志を、改めて示したと見ることもできる。